現在進んでいる東南アジア各地での数々の国際会議と首脳会議はコロナ以降、最も活発な重層的外交交流となっています。米中首脳会談では明らかにトーンは緩和方向。バイデン大統領が中国に気を遣い、会談は中国団の宿舎(ホテル)に出向く形で3時間にわたり行われました。主題の一つ、台湾問題は平行線でしたが、中国がアメリカとの対話を再開することとし、ブリンケン国務長官が近々中国入りし、実務レベルの山積する案件の交渉再開がまとまっています。これは評価すべき進展だと思います。

バイデン大統領と岸田首相 首相官邸HPより

日韓首脳会議でも徴用工問題を韓国国内でどうにか片付けようと事務レベルで動いていますが、なかなか展開しない中、尹錫悦大統領は解決に向けた努力を約束しています。更に岸田首相が習近平国家主席と17日にタイのバンコクで会談する予定も決定しました。この会談は岸田氏が日本を発つ前からずっと中国側と調整していたものですが、今般確定したのはたぶん、バイデン大統領との会談を受けたあとの政治的判断をしたのだと思います。これも評価できます。

産経に「支持率続落の底なし沼 旧統一教会への対応が焦点」とあり、岸田政権の支持率が38.6%に下落したと報じています。法務大臣の発言問題と統一教会問題さらには判断の遅さなど様々な点が指摘された結果です。ただ、公平に見て岸田氏にプラスの面が全くないわけでもなく、メディアの偏向報道が世論を形成した部分も大いにあると思います。先日のサンデージャポンで杉村太蔵氏が岸田氏が首相就任以降、経済は回復の一途を辿っており、首相しての主たる業務はきちんとこなしているのではないか、という趣旨の発言をしていました。これは岸田氏をかばうというよりまっとうな発言で私も岸田氏は好きではないけれど杉村氏の発言はなるほど、うなずけると思います。

もともと岸田氏は外務大臣経験者であることもあり、外交面に力を入れているのは事実で精力的な外交活動は安倍氏と良い勝負です。ところが国内の政権支持率にしろ、選挙のイシューにしろ、外交はまず主題にならないのです。これはアメリカでも英国でも同じで常に国内問題が主軸になります。物価高は世界中の政権に与えられた課題ですが、イシューとしては一国の首相や政権が取り組む課題としては大きすぎるのが正直なところなのです。だからこそ外交交渉はその一環だともいえ、岸田首相が何もしていないわけではないのです。メディアはそこが全然わかっていません。

ところで国のトップが外交に力を入れるもう一つの理由をご存知でしょうか?それは国内問題は議会とのやり取りを通じた法制化という複雑なパワーゲームがあるからなのです。が、外交問題は政権が議会とは別次元で動きやすいのです。そして派手なパフォーマンスや成果も得やすいわけです。そこでトップが国内問題を横にしてでも外交に走りやすいのはそのような背景もあるのです。