最近、SNS上で「ドカ食い気絶部」というパワーワードが話題となっています。
これは、高カロリーの炭水化物を”ドカ食い”し、急激に血糖値を上げることで、気絶したように爆睡することを目的とした行為だそう。
主にマクドナルドを食べることから、「マックドカ食い気絶部」とも呼ばれています。
言うまでもなく、非常に危険な行為なので”廃部”すべきですが、ここまで極端な話でなくとも、食後に眠たくなった経験は誰もが持っているでしょう。
学校でも職場でも、「お昼後の授業が眠くてしょうがない」とか「目を開けているのがやっと」という人はかなり多いはず。
では、なぜ食事をした後に眠くなるのでしょうか?
食後に訪れる睡魔の原因は「血糖値スパイク」?
食後に睡魔を招きやすい食べ物は、ご飯、麺類、パン、ジャガイモなど、デンプン質や糖分を多く含むものです。
私たちの体内では、デンプン質や糖分を摂取すると、血液中のブドウ糖の量が増えます。
すると血糖値が上昇し、それを管理するためにインスリンが分泌されます。
インスリンは主に、細胞にブドウ糖を取り込ませて、エネルギー生産を可能にするためのホルモンです。
それゆえ、インスリンは血糖値の調整だけでなく、私たちの日々の活動やエネルギーレベルを維持するのにも欠かせません。
問題は、デンプン質や糖分を多量に摂取しすぎたときです。
これらの食事を一度にたくさん摂ると、血中のブドウ糖が急増し、血糖値が急上昇します。
この異常な量のブドウ糖に対処すべく、過剰なインスリンが分泌されるので、今度は血糖値が急降下します。
この血糖値の急な乱高下を「血糖値スパイク」といいます。
血糖値の急降下によって低血糖状態になり、脳に糖分が行き渡らなくなると、眠気や倦怠感が訪れるのです。

また、こうした食事(それこそ、ドカ食い)を続けていると、血糖値スパイクが慢性化する恐れがあります。
そうなると、高い血糖値を下げるために、大量のインスリンが常に働いている状態が続くため、細胞が「インスリンの作用に対して抵抗性を獲得してしまう」のです。
すると今度は細胞がブドウ糖を取り込めなくなって血糖値を管理できなくなり、脳や体のエネルギーレベルが低下。
強い眠気や疲労感が常態化し、最終的には、糖尿病を引き起こす危険性があるのです。
また、血中の糖分が処理されず、体内の組織や細胞にたまっていくため、「糖化」という反応が起きます。
糖化は、老化や認知症、骨粗しょう症のリスクを高める危険な現象です。
血糖値スパイクは、デンプン質や糖分の多量摂取のみならず、食べ過ぎや早食いでも生じうるので、注意が必要でしょう。
心地よい睡眠を促すために

食事によって眠気が引き起こされる理由は、他にも考えられます。
たとえば、肉、魚、チーズ、卵などの高タンパク質食品は「トリプトファン」というアミノ酸を含み、これは、神経伝達物質である「セロトニン」の合成を促します。
セロトニンは、”幸せホルモン”とも呼ばれ、気分を落ち着かせるリラックス効果があります。
これによって、心地よい眠気が誘導される場合もあるのです。
こちらは、先ほどの血糖値スパイクによる眠気とは違って、体に悪いものではありません。
それから、チェリーに含まれる「メラトニン」は、入眠を促すホルモンとして知られますし、バナナに豊富なカリウムやマグネシウムには、筋肉をリラックスさせる効果があります。
こうした食材を逆に利用して、食後の心地よい睡眠を促すのもありかもしれません。
ただいずれにせよ、無茶なドカ食いでは健康を害することに変わりはありません。
参考文献
Why Do We Feel Sleepy After Eating?提供元・ナゾロジー
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