長らく不漁報道が続きすっかり高根の花となっていたサンマ。しかしここにきて急に豊漁を迎えた場所があります。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

北海道でサンマが豊漁 沿岸部にも回遊で数百匹釣りあげた釣り人も

北海道でサンマが豊漁

北海道の東に突き出し、オホーツク海と太平洋を分ける境界となる根室市。根室海峡に臨み、サンマ漁が盛んなことで知られる街です。

この根室市のオホーツク海側にある根室港と、太平洋側にある花咲港で今月上旬からにわかに、サンマの豊漁が続いています。7日には両港合わせ700tを超える水揚げがありました。

北海道でサンマが豊漁 沿岸部にも回遊で数百匹釣りあげた釣り人も釣れるほど接岸しているサンマ(提供:砂ユタ)

特に知床半島にある羅臼町沖での魚影が濃く、付近の海では毎晩集魚灯の明かりが輝いているといいます。同町のサケ定置網漁師は「定置網の周りにもたくさんサンマがいて、網ですくおうかと思ったほどだ」と驚いたそうです。

また付近の沿岸各地の釣り場では、突然のサンマ釣りフィーバーが発生。多い人では数百匹も釣りあげており、晩秋の椿事に沸いています。

そもそもなぜ不漁だったの?

ここ数年と同様に、今年もサンマは全国的に不漁に陥っていましたが、中でも根室海峡付近で獲れる「海峡さんま」は今年特にひどい状況が続いていました。全国さんま棒受網漁業協同組合によると、10月末までの花咲港でのサンマ水揚げ量は、10年前と比べて10分の1以下である6210tにとどまっていました。

全国的な不漁の原因は海洋温暖化などが指摘されていますが、海峡さんまについては国際情勢、もっと言うと「ロシアのウクライナ侵攻」の影響が大きかったといえます。日本が対ロシア経済制裁に参加していることなどが影響し、北方領土に臨する根室海峡では、日本の漁船がロシア側に拿捕されるリスクが高まっているとされていたのです。

北海道でサンマが豊漁 沿岸部にも回遊で数百匹釣りあげた釣り人も獲りたくても獲れなかった(提供:PhotoAC)

そのため日本のサンマ漁船は、例年なら主漁場となる北方四島や千島沖の海域での漁ができず、拿捕リスクは低いもののサンマの群れも薄い公海での操業を余儀なくされてきました。

しかし11月に入り、サンマの群れが千島沖から北海道沿岸まで南下。日本の領海である羅臼町沖などで漁獲されるようになり、遅まきながら漁が本格化したのです。

今後はどうなる?

サンマは冷水温を好む魚で、表面水温が12~18℃の海域が主な漁場となります。そのため季節が進行し海水温が低下するにつれて、漁場は南に移動していきます。

北海道でサンマが豊漁 沿岸部にも回遊で数百匹釣りあげた釣り人も徐々に買いやすくなる?(提供:PhotoAC)

例年だと、8月中まではロシア海域~北方領土付近が漁場の中心となるものの、その後は南下し、9~10月ごろから道東海域で獲れ始めます。仮に今年それより少し遅れているとすれば、今後はよりサンマの群れが南下し、12月ごろには東京市場への入荷も多い「三陸沖産」のサンマが豊漁となる可能性はあります。そうなればここ数年と比較して多少買いやすい価格となるかもしれません。

ところで、もし仮にサンマの漁期が年々遅くなっていくのであれば、今後はサンマは冬の魚と呼ぶべきものになるでしょう。その場合は漢字名も秋刀魚ではなく「冬刀魚」にするほうが実情に即しているといえるかも……?

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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