ホンダの研究開発子会社の本田技術研究所は2022年11月2日、人と協調できる独自の協調人工知能「Honda CI(Cooperative Intelligence)」を活用した「ホンダ CIマイクロモビリティ」と、搭載されるコア技術を公開した。このCIマイクロモビリティを用いた技術実証実験を、茨城県常総市内の「水海道あすなろの里(2022年11月より)」と「アグリサイエンスバレー(2023年春より)」で順次開始することになっている。
ホンダは、いつでも、どこでも、どこへでも、人とモノの移動を「交通事故ゼロ」、「ストレスフリー」で可能とし、「自由な移動の喜び」を一人ひとりが実感できる社会の実現を目指し、CIマイクロモビリティの技術開発に取り組んでいる。
今後、少子高齢化やアフターコロナの社会では、ますますマイクロモビリティによる人とモノの自由な移動ニーズが増加することが予想されている。今回、ホンダは高精度地図に頼らず環境を認識しながらの自動走行を可能とする「地図レス協調運転技術」、人間のように対話やジェスチャーでコミュニケーションが可能な「意図理解・コミュニケーション技術」の2つのコア技術を確立した。
そして、それらの技術を活用した「搭乗型マイクロモビリティ:CiKoMa(サイコマ)」、「マイクロモビリティロボット:WaPOCHI(ワポチ)」を常総市内の複数エリアでの技術実証実験で使用し、リアル環境下での技術検証を行なう計画だ。
今後は、常総市内の技術実証実験エリアを順次拡大しながら、2030年ごろの実用化を見据え、CIマイクロモビリティの技術をさらに進化させることで、「移動と暮らしの進化」と「交通事故ゼロ」を両立する「ホンダ CIマイクロモビリティ」の実現を目指すとしている。
地図レス協調運転技術は、高精度地図に頼らずカメラベースで周辺環境を認識し、目的地まで安全を維持しながら自動走行を可能とする技術を意味する。まず、リアルタイム道路構造理解機能(車道)は、カメラからの画像情報だけ(=高精度地図レス)で交差点やカーブなどの環境、歩行者や車両などの他者を認識し、リアルタイムで走行可能領域を素早く理解・決定する機能だ。2番目は、空間認識・走行マップ高速変換機能で、車道のように区画線や縁石などがないオープンスペースで、障害物の距離や物体構造を瞬時に立体化し、人間の目と同じように走行可能な領域を素早く認識しマップとして生成する機能だ。3番目は人・環境協調 行動計画機能で、さまざまな走行環境を考慮したリアルタイムのルート最適化アルゴリズムを用い、目的地まで熟練ドライバーのように安心・スムーズに移動できるルートを決める機能で、この3つの技術により地図情報なしでの移動が実現している。
人間のように言葉や身振りを理解し、モビリティが自ら考え、提案できるコミュニケーション技術(意図理解・コミュニケーション技術)は、ユーザーとモビリティが互いに見えているものを言葉で伝え合い、人間同士のように自然なやり取りで、移動する位置を理解し合える機能(意図のキャッチボール機能)、複数のユーザー候補から特徴的な違いを判断し、人間のように対話でユーザーを特定できる機能(対話によるユーザー特定機能)、人間の経験を 「事前知識」 として登録することで、ルール・マナー・危険度などのネガティブ要素を避けるように交渉、提案するなど、人間のように周囲の状態を考慮して提案できる機能(ユーザーとの交渉・提案機能)から構成されている。
実証実験で使用されるマイクロモビリティは以下のようなものだ。 ・搭乗型マイクロモビリティ CiKoMa(サイコマ):1人~数人までの乗員数を想定した、いつでも・どこでも・どこへでも“意のまま”に移動できる搭乗型の電動マイクロモビリティ。ユーザーは言葉で呼び寄せることができ、無人自動走行で移動してきたCiKoMaに好きな位置を言葉やジェスチャーで指定して乗ることができる。
走行中は「ジョイスティック」の操作で進路を指示することで、ドライバーの自由に進路を選ぶ意図と自動走行技術による協調運転が可能。必要な時に呼んで乗車し、任意の場所で乗り捨てる利用を想定しており、自由に走らせることができるため、ビジネスや観光、街なかの短距離移動など、気軽な移動手段となることを目指している。
・マイクロモビリティロボット WaPOCHI(ワポチ):ユーザーの特徴を記憶・認識し、人混みの中でもユーザーに追従し続ける電動マイクロモビリティロボット。手のひら静脈認証で特定したユーザーの服や髪の毛の色、背格好などの特徴を画像で認識して記憶。
ユーザーの斜め後ろを、荷物を載せながらペットのように追従走行することができる。認識は上部に設置された複数のカメラを使用して360度立体的に捉え、AIでユーザーの特徴を抽出しトラッキング。追従中に他の歩行者の陰などに隠れてユーザーを見失っても、記憶した特徴から探し出し、追従に戻ることが可能。さらに今後は、ユーザーの前を先導し歩きやすさをサポートする機能の実現も目指し、研究を続けている。
文・松本 晴比古/提供・AUTO PROVE
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