いま、全国で「見慣れぬ魚」が次々と見つかったり、漁獲されるようになっています。一体何が起こっているのでしょうか。
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「珍魚」を狙う釣り大会が実施
本州最南端に位置する和歌山県串本町。その中心にある串本漁港で先月16日、釣った魚の「珍しさ」や「串本らしさ」を競う「珍魚釣り選手権inフィッシングタウン串本」なる釣り大会が実施されました。
このユニークな釣り大会は、串本の海の豊かさを知ってもらうことなどを目的に2013年から開催しているもの。特定の魚種を狙うものではなく、逆にどれだけ多くの魚種が釣れるかどうかがテーマとなります。今回は計23種類もの魚が釣り上げられたそうです。
珍魚度で競う
この大会では、過去の実績を基にして魚種ごとに「珍魚度」なるものさしを定めています。この珍魚度が高い魚を釣り上げた人に贈る珍魚大賞と、釣り上げた魚の珍魚度の合計点数で決める珍魚賞などが表彰されます。なお今回の珍魚大賞の1位には「シボリ」という南方系の魚を釣り上げた少年が選ばれたそうです。
各地で水揚げされる「珍魚」
さて、この大会に際し、実行委員長を務める南紀串本観光協会事務局長は「海が変化して、昔は珍魚であったものが今はそうではないこともある」と語っています。この言葉の通り、いま全国各地で「それまで見られなかった魚」がどんどん見られる、また漁獲されるようになっています。
有名なものでは、北海道の「ブリ」や「シイラ」が挙げられます。どちらも本来は温暖な海を好む魚ですが、今や寒冷なはずの北海道周辺の海でもごく普通に見られる魚です。
また北海道南端の函館ではカワハギが見られるようになっている他、福島のイセエビやトラフグ、東京湾のキジハタ、相模湾のアカハタなども目に見えて増えています。
原因は温暖化
このような各地の「新顔魚」について、東北大学などのチームが興味深い研究結果を発表しています。この研究は、全国各地で海水のサンプルを採取し、そこに含まれる魚たちのDNA情報を抽出するというもので、これを分析してどの海域にどんな魚が分布しているのかをデータベース化しています。
そこで得られたデータをもとに、日本を地域ごとに細分化し、ある魚のDNAが検出された地点が多い地域と、少ない地域のバランスをとって平均化したポイントをその魚の「重心」と規定。「重心」の位置がここ数年でどの方向にどれくらい移動したかを調べたのです。
その結果、調査した魚種の6割近くが北にその「重心」を移動していたことが判明したそう。その原因はやはり「海洋温暖化」で、海水温の上昇でもともとの分布域が生息に適さなくなり、北に移動したとみられています。ちなみにいくつか南に移動した魚もいましたが、それは他の魚の生息域が北上した結果南に追いやられたと考えられるそうです。
前記したブリやシイラ、カワハギなどの新顔魚たちも、基本的にはもともとの生息域より北で新たに見られるようになったもの。各地で「珍魚」と呼ばれている魚たちの多くは、海水温の上昇によってやむなく新天地を目指したものなのかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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