出店企業がECモールから顧客を根こそぎ奪われるカラクリ
私はZOZOTOWNができたときから、人気ブランドのテナントがZOZOTOWNのようなECモール内に出店した場合、顧客情報やクレジットカード情報などは、すべてモールが持つことになり、知らない間に顧客はモールのクロスセル、アップセルなどの手法で完全に顧客をモールに奪われてしまう、と言い続けてきた。通販企業で実務と役員として、私が6年やってきた「一度データベースに入った顧客を逃がさぬ努力」を、最近ようやく「名寄せ」程度をはじめたアパレルにはわからないだろう。
今、中国では同じことが起きている。日本の化粧品会社は、アリババグループのECモールに、「売れるから」というただそれだけの理由で何も考えずに出店している。
その代わりアリババは、その化粧品の顧客の情報やクレジットカード情報を掌握し、それら化粧品会社の上顧客を根こそぎ奪う戦略に出るだろう。そして日本の化粧品ブランドをベンチマークした、価格優位性の高い中国、韓国のブランド商品(パクリとも言う)にごっそりとられることになろう。
言わずもがな、ZOZOTOWNのもっとも大きな収益は7〜8割を占める委託販売(図3)である。
また、例のボディースーツでカラダを計測してパーソナライズされたプライベートブランド(PB)商品を顧客に提供するゾゾスーツ事業は22年6月に終了している。なお後継のゾゾスーツ2は継続中だが、市販/無料配布はされておらず、新たなサービスを創出するパートナー企業を募集する形となっている。
さて、次に注目したいのが、アパレル企業の「在庫リスクゼロ」をめざす生産支援として22年9月からスタートした「Made by ZOZO」である。受注生産をMTO (made to order) と呼び、同じ生産量でも売上は1.5倍に増えている(図4)としている。これは、受注生産の場合プロパー消化率が100%ということになり、在庫ビジネスの場合、オフ率が30%(総投入量に対して)、プロパー消化率70% (本来金額ベースで算出すべきであり、余剰在庫の残品率もいれるべきだが、簡易的に数字を掴むためにこのようにした)になるわけだ。しかし、ZOZOTOWNのビジネスは、本質的に在庫は持たず、買取はPBしかありえないため、さらに、そのPBも今はほとんどないためさしたる強調すべきビジネスとはいえない。
同社は、この技術をSustanability対応の一貫としているが、私が評価しているのはZOZO usedだ。これは、同社で購入した商品を自動認識して買取り、再販するというもので、私が理想的だと考えているソリューションに最も近い。今は、全売上の3-5%程度だが、ぜひ頑張ってこれを伸ばしてい頂きたい。日本政府は、こうした動きをもっとサポートすべきである。
ZOZOCOSMEの100億円は早晩実現する
ZOZOスーツの如く登場したZOZOグラスを使って、色をAIが解析し、AR技術をつかって化粧品をレコメンドする仕組みだ。ZOZOは、否が応でもスマホで全てを簡潔したいようだが、このアプローチはありだとおもう。私は、散々、メタバースなどまだ早い。なによりマネタイズのイメージが全く湧かないといってきたが、ARは近い将来多くの企業に採用されるだろうと予言した。
なにより、色、という曖昧な提案の裏に、ハイテクらしきものがあれば、SHARPのプラズマクラスターやPanasonicのナノイーのように、効果がありそうだ、と思わせることが大事だからだ。とくに、ヘルス&ビューティの領域は、2016年にアパレルを市場規模で抜かしており、メンズも化粧をする時代だ。この領域はもっと力を入れるべきだろう。同社は、この事業を100億円に育てたい、そうすればtier 1(売上最上位層)になるという趣旨のことを発言しており、現在、同社のコスメの売上は57億円とのことだが、100億円は、早晩届くことになるに違いない。