熊本、J2昇格1年目でJ1昇格となるか

J2リーグ4位でJ1参入プレーオフに進出したロアッソ熊本。1回戦では5位の大分トリニータ(2-2)、2回戦では6位のモンテディオ山形(2-2)に引き分けて、京都の待つ最終戦へ駒を進めた。2021シーズンまではJ3リーグに所属したクラブが、J2昇格初年度でJ1の切符を掴むという前人未到の偉業達成目前だ。今シーズン最も実力が拮抗したプレーオフで、J2代表としてJ1行きを決められるかに注目したい。

熊本の前線から積極的にボールを回収する姿勢は、シーズンを通して継続された。相手のビルドアップを崩してチャンスを呼び込む。組織として精錬されていないと容易くできないサッカーを表現している。大木武監督の基本的な戦術は京都と似ているため、最終決戦は白熱することは間違いない。スタートから激しさの伴う肉弾戦になることが予想される。どちらがいかにボールを回収できるかが重要になるだろう。

特筆すべきは熊本のアウェイ戦での強さだ。アウェイ戦績だけでの順位に注目すれば、10勝7分4敗と好成績を収めており、自動昇格を果たした新潟や横浜FCを上回る1位である。11月13日は、サンガスタジアムも攻略することができるだろうか。

一方で、終盤戦からプレーオフまで戦績としては決して良いと言えるものではなく、プレーオフ含めたここ5試合では1勝2分2敗。勝利が必須となる次の試合においては不安が残る。またいずれの試合も失点を許していることも不安要素として否定できない。勝利以外にJ1昇格の道はなく、不用意な失点は何としても避けたいところだ。


Jリーグ旗 写真:Getty Images

どう見てもJ1クラブに有利な大会概要

最後に大会概要について触れておきたい。J1参入プレーオフ最終戦となるJ1リーグ16位とJ2勝者の試合は、まずJ1クラブのホームスタジアムで開催されることが決まっている。また、90分で決着がつかない場合には、延長戦やPK戦を行わずJ1クラブ勝利という、どう見てもJ1クラブ有利の大会ルールになっているのだ。毎回この手の試合が行われるときには「このルールで本当にいいのか?」と議論が行われている。

正直なところ筆者も、このルールには納得しているわけではない。J1クラブは引き分け狙いで戦う可能性があるからだ。シーズンの運命が決まる極めて重要で面白い試合が、一気に興ざめする内容になりかねない。毎シーズン2クラブの昇格・降格がベースという考えが運営側にはあるのかもしれないが、こうしたプレーオフを行うのであれば、やはり公平性を持たせるために中立地開催で行い、引き分けの場合は延長戦やPK戦を行うべきではないだろうか。