日々の食事に気を遣うダイエッターにとって、甘くて美味しいデザートは悩ましい存在です。

特にホイップクリームたくさんのショートケーキやクレープは魅力的ですが、脂質が多く、すぐにオーバーカロリーになってしまうでしょう。

しかし最近、デンマーク・コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)食品科学科に所属するイェンス・リスボ氏ら研究チームが、乳酸菌で作る無脂肪ホイップクリームを開発中です。

実験では、2種類の乳酸菌を用いてホイップクリームの固さを調整することもできました。

研究の詳細は、2022年9月18日付の科学誌『Food Hydrocolloids』に掲載されています。

ダイエットしていても安心!?乳酸菌を使った「無脂肪ホイップクリーム」

「ホイップクリームは太りやすい」という考えは間違いではありません。

なぜならホイップクリームは脂質38%の高脂肪食であり、甘くするためにたくさんの砂糖も含まれています。

ダイエットの天敵「ホイップクリーム」
Credit:Canva

砂糖と油の塊なので、当然カロリーも高くなります。

現在では、乳脂肪を含まない代替ホイップクリームも数多く存在していますが、それでもココナツミルクなどの植物性脂肪が利用されており、少なくとも脂質は25%になります。

では、ダイエッターの味方でいてくれるような無脂肪のホイップクリームはないのでしょうか?

リスボ氏ら研究チームは、2種類の乳酸菌(Lactobacillus crispatus、Lactobacillus delbrueckii)を利用して無脂肪ホイップクリームを作ることに成功しました。

生クリーム(左)を泡立てるとホイップクリーム(右)になる。ホイップクリームでは脂肪球が網目構造になって気泡を保持する
Credit:NAKAZAWA

通常ホイップクリームは、生クリームを泡立てて作られます。

泡立てた時の衝撃で脂肪球(膜に包まれた乳脂肪)を破壊。脂肪球同士がくっついて網目構造を作ることで、その中に空気を抱え込むのです。

研究チームによると、「無脂肪ホイップクリームは、水、乳酸菌、少量の乳タンパク質、増粘剤の4つの材料だけでできている」ようです。

乳酸菌と乳タンパク質が網目構造を作ることで、その中に空気を抱え込むのです。

柔らかいホイップクリーム(左)と固いホイップクリーム(右)、 緑色の領域は乳酸菌と乳タンパク質の網目構造。球体は気泡。
Credit: Jens Risbo(University of Copenhagen)_Is the future of whipped cream fat-free and made of bacteria and beer waste?(2022)

これにより、乳脂肪を使わないホイップが作られます。

そして2種類の乳酸菌を使い分けることで、口当たりの良い柔らかいホイップクリームとデコレーションに最適な固めのホイップクリームを作れるのだとか。

1つの乳酸菌は親水性があり、これが柔らかい泡を形成するのに役立ちます。

そしてもう1つの乳酸菌には疎水性があり、角が立つ固めの泡を作るのに役立つのです。

(左)親水性乳酸菌による柔らかいホイップクリーム、(右)疎水性乳酸菌による固いホイップクリーム
Credit: Jens Risbo(University of Copenhagen)_Is the future of whipped cream fat-free and made of bacteria and beer waste?(2022)

無脂肪のホイップクリームが販売されるのが待ち遠しいと感じる人も多いでしょう。

しかし研究チームによると、「今回の研究は概念実証に過ぎない」ようです。

乳酸菌を使ってホイップクリームが作れると判明したので、今後は人間が食べることを想定し、より食品に適した乳酸菌や製造方法を探っていくことになるでしょう。

地道な努力で理想の体型を手に入れるのが先か、それとも無脂肪ホイップクリームの商品が誕生するのが先か、ダイエッターの悩ましい状況はしばらく続きそうです。

参考文献
Is the future of whipped cream fat-free and made of bacteria and beer waste?

元論文
Lactic acid bacteria as structural building blocks in non-fat whipping cream analogues