アフリカ南西部に位置するナミビアには、世界遺産の「ナミブ砂漠」があります。
この砂漠の奥地には、長年科学者を悩ませてきた「フェアリーサークル」と呼ばれる不思議な風景が広がっています。
草原の中に、草の生えていないミステリーサークルが無数に点在しているのです。
今回、ドイツのゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン(GAU)に所属するステファン・ゲッツィン氏ら研究チームは、「フェアリーサークルの原因は、草がわずかな水分を有効活用した結果だった」と報告しました。
研究の詳細は、2022年10月20日付の科学誌『Perspectives in Plant Ecology, Evolution and Systematics』に掲載されました。
ナミブ砂漠の「フェアリーサークル」
ナミブ砂漠の奥地には、わずかな雨量で生育する草原が広がっています。
そしてこの草原には「フェアリーサークル」と呼ばれるミステリーサークルが存在しています。

1つのフェアリーサークルは直径2~10mほどの大きさで、サークル内にはなぜか草が生えていません。
それぞれのサークルは他のサークルから10m離れています。
画像から分かる通り、バランスよく点在するフェアリーサークルには何らかの規則性や意図があるように感じられますね。
科学者たちは以前からフェアリーサークルが発生する原因を突き止めようとしており、現在では2つの説が有力だと考えられています。
1つは、シロアリが草の根を食べているという説。
しかしこの説は、明確な関連性が得られないまま現在まで放置されています。
そしてもう1つは、自己組織化によってフェアリーサークルのような模様ができているという説です。

自己組織化とは、ランダムな状態にある複数の分子や物質が相互作用し、時間の経過とともに、自然に安定した構造がつくられることを指します。
例えば自然界には、熱帯魚やキリン、シマウマの模様、太陽系惑星の軌道などの美しいパターンが見られますが、これらも自己組織化の結果です。
科学者たちは、フェアリーサークルにも同様の原理が働いているかもしれない、と考えているのです。
そして今回ゲッツィン氏ら研究チームは、これらの説を検討するために長期間の調査を実施しました。