「シュプリーム(Supreme)」とは、大人気スケーターブランドというのが世間でのイメージだろう。若い世代を中心に幅広い層から指示され、赤いボックスロゴが特徴的な「シュプリーム」だが、一体なぜ「シュプリーム」がここまでの爆発的な人気を獲得したのだろうか。
「シュプリーム」を知る前に、ジェームス・ジェビア(James Jebbia)という男を知っておくべきだろう。この男によって設立されたブランドがのちに大ヒットになる「シュプリーム」なのだ。ジェビアは米国ニューヨーク市のマンハッタンで生まれ、米国空軍に所属する父と英語の教師を務める母親の元で生まれ育った。1歳のころにイングランドの、ウエスト・サセックス州のクローリーという街に移り住んだ。クローリーの街は2階建ての住宅がゆったりと連続して立ち並んでおり、通りには電柱、電線がなく広い空を見上げることができるのどかな町だ。石器時代から居住が存在しており、ローマ時代は製鉄の中心地だった。13世紀には、マーケットタウンとしても栄えはじめ1840年には鉄道、1940年には空港が開港するなど著しい発展を遂げていった街である。
そんな街で育ったジェビアが10歳のころに両親は離婚してしまうが、ジェビアは19歳のころに米国のニューヨーク市のスタテンアイランドに移り、スケートショップ兼アパレルショップの「パラシュート(Parachute)」で働き始める。その後経験を積んだジェビアは、1989年に「ユニオン NYC(union NYC)」を設立し、英国発ブランドを中心にしたセレクトショップをオープンさせた。ジェビアを語る上ではずせない男がいる。それは彼の大親友であるショーン・ステューシー(Shawn Stussy)だ。「ステューシー(Stussy)」の創業者である。「シュプリーム」を創業するまでの間、ショーンと共に働く傍らに、「ユニオン NYC」の経営を行っていた。現在は閉店している。
その後、1994年にジェビアは記念すべき「シュプリーム」1号店をオープンさせた。ジェビアは自分の理想とするスケーターショップがないと感じており、「シュプリーム」はそれを体現したようなものだった。当時のスケーターショップではあり得ないような高級ブディックのような内装だった。普通のスケーターショップは小さな店内に商品を陳列しているものが主流だった。この大胆な戦略が功を奏したことで「シュプリーム」は人気を獲得したが、世界中に知らしめることになったエピソードが存在する。英国のファッションモデルのケイト・モス(Kate Moss)を起用した「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)の広告に「シュプリーム」のステッカーを貼るというプロモーションは『ニューヨークタイムズ』に取り上げられるなど注目を集めた。見事にプロモーションは成功したものの、案の定訴えられたが、ジェビアのこういったプロモーションを生み出すセンスが「シュプリーム」の魅力にも繋がっているのだろう。その後、ケイト・モスは「シュプリーム」の数々の著名人のフォトグラフィックTシャツに登場している。
当時の「シュプリーム」は今とは違い、オープン当初は「ヴァンズ(VANS)」、「ディーシー(DC)」などのスケーターブランドを取り扱うセレクトショップとしてオープンしていた。そこに、自身がデザインした「シュプリーム」オリジナルのデザインのTシャツを販売しており、その後 Tシャツ以外のアイテムも増え今のオリジナルアイテムをメインに販売する今の形体へと移行していく。
日本では1998年に代官山にオープンし、原宿、渋谷、大阪、名古屋、福岡などの6店舗がある。当時、代官山店がオープンするまで、日本ではマイナーブランドとしての位置付けにあり、「ストーミー(STORMY)」などの一部セレクトショップにしか取り扱いがないため、知名度も高くなかった。しかし、裏原ブームを牽引していたNIGOや藤原ヒロシが着用したことで知名度をあげていき、当時大活躍していた窪塚洋介も着用したことで日本の「シュプリーム」への熱は高まり大ヒットに至った。この大ヒットには、1996年に有限会社ワングラムが正規代理店となり、PR担当だった恵比寿久雄氏の力添えも大きい。
「シュプリーム」の人気の一つと言えば数々の人気ブランドとのコラボレーションだろう。一番真っ先に思い浮かぶコラボレーションは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」だろう。2017年にリリースされ、ストリートファッションとラグジュアリーブランドとの組み合わせは珍しく、今でも根強い人気だ。「コム デ ギャルソン(COMME des GARCONS)」とのコラボレーションではジェビア自身が大きな契機だったと語っている。インタビューでは「あのコラボレーションによって色々な扉が開いて、色々な人たちから注目されるようになった」と述べており、モード界の巨匠とのダッグは「シュプリーム」をストリート界に止まらずモード界にも名を轟かせることになった。「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」とのコラボレーションは2007年から10年以上行っており、毎年魅力のあるアイテムがリリースされている。ダウンジャケットやマウンテンパーカはとてつもない人気を誇り2011年には秋冬コレクションの中で、大人気のヌプシジャケットがリリースされ希少価値の高いモデルになっている。他にも、「ナイキ(NIKE)」、「ア・ベイシング・エイプ(A BATHING APE)」、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」といった名だたるブランドとのコラボレーションが存在している。
世界に計14店舗あり、米国5店舗目となるハリウッドでの出店も計画中だ。数々の歴史を生み出し世界のファッション業界に革新を与えてきた「シュプリーム」だが、前述してきたような背景があり、ストリートカルチャーに根付いたブランドということが理解できたはずだ。この記事を読み「シュプリーム」をより理解してもらえたら幸いである。
文・粟津原晟名/提供元・SEVENTIE TWO
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