ポスト・コロナ禍の人流回帰とインバウンド期待

マツキヨココカラ&カンパニー、時価総額がドラッグストア業界で首位となった理由とは
(画像=『DCSオンライン』より 引用)

 まず初めに思い浮かぶのは、株式市場の物色の変化です。

 ポスト・コロナ禍で人流が回復し、インバウンドが復活し、人とのコミュニケーションもバーチャルからリアルへの揺り戻しがくるーそうであれば、医薬品に加えて食品・雑貨でコロナ禍のライフラインを支えたディスカウント志向のドラッグストアから、都心立地に強くビューティー重視のマツキヨココカラ(マツキヨ側に色濃いのでしょうが)に脚光が移ってきた(戻ってきた)と考えられます。

 しかしこれだけで説明を終えるのは筆者には拙速な気がしてなりません。

 というのも株価がコロナ禍前の水準を超えつつあるからです。10月中旬以降株価は少し調整していますが、10月上旬には2018年につけたコロナ禍前の高値を超えています。また、現在の株価も2019年の株価のレンジより高い位置にあります。

 そこでマツキヨココカラのファンダメンタルズを点検し、ポスト・コロナ禍で新しいストーリーが芽生えているのかどうか、点検したいと思います。

統合効果の着実な発現

 マツキヨココカラの株価動向を考える上で見逃せないのは、2021年10月に統合したマツモトキヨシグループとココカラファインの統合効果がさっそく売上高経常利益率の向上に現れていることです。

 2022年4−6月期決算では、売上高2272億円、経常利益135.6億円、売上高経常利益率6.0%でしたが、

  • ココカラファイングループを含めない前年同期の売上高経常利益率に対して+0.2ポイント改善
  • ココカラファイングループを含めた前年同期の売上高経常利益率に対して+1.1ポイント改善

     こうした利益率向上を、ココカラファインとの経営統合に伴うのれん償却額及び商標権償却費を費用計上した上で実現していることに筆者は注目しています(統合に関する費用を除けばさらに利益率が高いというわけです)。

     ちなみに、2022年3月期通期のココカラファイン合算ベースの売上高経常利益率は5.6%で、年間+0.4ポイント改善しました。これが今期(2023年3月期)に入っても継続していることになります。

 商品別に粗利益率を確認すると、化粧品・雑貨・食品の各カテゴリーで満遍なく改善しています。

 同社のビジネスは業界他社と比べて、売上高経常利益率が高く、かわりに在庫回転率と資産効率が低い構造ですので、売上高経常利益率は同社にとって最も肝心なKPIです。このためこの数値改善は投資家には心強い材料です。

 同社の売上高経常利益率は過去数年にわたり業界内で高水準にありますが、この傾向は直近四半期でも確認できます。ビジネスモデルの違い、成長局面の違い、在庫回転の違い、あるいは補助金収入の寡多などの要素があるものの、業界トップクラスの売上高経常利益率は投資家の評価につながります。