今後は「人間心理」だけでなく「AI心理」も研究される

今後は「人間心理」だけでなく「AI心理」も研究される
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

AIの脳であるニューラルネットはなぜ、なぜ人間と同じ偏りを持ったのか?

研究者たちは、AIのニューラルネットでも人間の脳と同じように知識の概念化が起きていると述べています。

概念とは「なんであるか」「どういうものか」といった物事の本質を理解するために用いられる、あらゆる思考の基礎となるものです。

人間は学んだ知識を脳内で概念化しており、関連が深い概念同士は強く繋がり、関係が浅い概念同士は弱く繋がって、巨大な概念のネットワークが形成されています。

この概念ネットワークが、人間がこの世界について持っている知識の総体であり、世界を認識するためのベースとなっています。

人間が文字や数字に特定の色を答えやすくなっているのも、この巨大な概念ネットワーク構造が存在する証拠の片鱗だと言えるでしょう。

研究に用いられたGPT-3はあらゆるネット上に存在する3000億に及ぶ文章のパターンをもとに学習し、自らの脳「ニューラルネット」を構築しました。

つまり、AIは、人間を模倣した脳の仕組みを使って、人間由来の膨大な情報を学んだ結果、人間と同じような概念ネットワークを構築していた可能性があるのです。

(※人間と同じ意識が存在するかどうかは不明です)

そのため研究者たちは今後、人間の代りにAIを心理研究の題材として活用できる可能性があると述べています。

人間に似た心理回路をもつAIを実験体にすることで、人間に対しては不可能であった過酷な心理実験も可能になり、やがては人間の認知にも知見をフィードバックできると期待されます。

数字や文字に色を感じる共感覚の才能を持つ人々は違う結果になった

共感覚の才能を持つ人々は文字や音にも色を感じられる
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

今回の研究はAIにも人間と似た「色の概念」がある可能性が示されました。

しかしこのAIとの一致は、一般的な人間に限られていました。

これまでの研究により、人類の中には一定確率で文字や数字、さらには音・臭い・味覚などに「色」を感じてしまう「共感覚」と言われる特異な才能を持つ人々が存在することが知られています。

一般的な人間は文字や数字に色をあてはめるように言われると、しばしば思い至らず迷ってしまいますが、共感覚を持つ人々は文字や数字などに実際色を感じることが可能になっています。

今回の研究では、一般の人間に加えて、これら共感覚を持つ人々の回答結果も集計されました。

結果、共感覚の人々が文字や数字に感じる色は、AIの回答とほとんど一致していないことが判明します。

この結果は、一般の人間とAIは学習した知識を概念化することで文字や数字に色を当てはめることを可能にしましたが、共感覚の人々は異なる方法で色を結び付けている可能性を示します。

もしAIに特殊な学習をさせることで共感覚の人々の回答結果に近づけることができれば、共感覚型AIを作れるかもしれません。

参考文献
“色名の連想しやすさの起源:人間とAIの比較” ~自然言語処理ができるAIの心理研究プラットホームへの応用~

元論文
Origin of the ease of association of color names: Comparison between humans and AI