「探求は続く」本当の起源は魚が誕生するより前かもしれない
今回の研究により、陸上脊椎動物の鳴き声をあげる能力が4億700万年前に存在した魚と4足動物の中間にあたる肉鰭類(にくきるい)にあることが示されました。
私たち人間が言葉を話せるのも、森で鳥たちの歌声が聞こえ、犬や猫などのペットたちが飼い主を求めて甘え声を出せるのも、水中生活から抜け出そうとしていた先祖たちが鳴く能力を獲得したからだったのです。
しかし、これで音響コミュニケーションの起源を辿る旅が終わったと考えるのは早計でしょう。
2020年にアリゾナ大学で行われた研究で調べられた1800種類の動物も、今回の研究で追加された53種類の動物たちも、陸上に住む動物というカテゴリ内に限られていました。
肺を使う鳴き声の起源は肉鰭類(にくきるい)かもしれませんが、音を使ったコミュニケーションは水中でも可能だからです。
そして肺の原形は魚類の浮袋にあることが知られています。
もし肺を使った鳴き声をあげる能力が水中音波を出す能力を継承したものである場合、音を使ったコミュニケーションの起源はさらに遡ることになるでしょう。
そのため現在研究者たちは今後、陸上脊椎動物の鳴き声だけでなく、魚などの水生脊椎動物から発せられる水中音波の録音を行っていくとのこと。
具体的なターゲットとして考えられるのは、原始的な脊椎動物であるヤツメウナギや脊索動物である幼生期のホヤとなるでしょう。
(※ホヤを幼生期に限定しているのは、ホヤは大人になると脳を無くすからです。コミュニケーションには脳がかかせません)
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もし魚たちやヤツメウナギや幼生期のホヤなどがコミュニケーションを目的とする水中音波を出していた場合、音響を使ったコミュニケーションの起源は4億年よりもずっと前、脊椎動物の祖先が誕生した5億3000万年前のカンブリア爆発にまでさかのぼれるかもしれませんね。
参考文献
進化学:脊椎動物における音声コミュニケーションの起源の推定元論文
Common evolutionary origin of acoustic communication in choanate vertebrates