国の将来を託せる若手エリートを育てよ

コロナ感染者数は再増加の傾向と大騒ぎしているが、ここ2-3日の増加はどう考えてもお盆休みで検査数が減ったため、検査がずれ込んだことが要因だと判断される。多くの人が帰省した地方自治体では過去最高の感染陽性者を記録しているが、感染者の多くを占める東京都と隣接する3県や大阪府と隣接する府県では頭打ちになっているので、日本全体では台形の様なパターンで感染者数が推移し、その後に減少していくことになると予測される。

凋落する日本
da-kuk/iStock(画像=『アゴラ 言論プラットフォーム』より 引用)

多くの都道府県では1週間の平均感染者数は台形のようなパターンを示しているが(今は台形の上辺)、感染者数が高止まりしているのではなく、検査限界を超えたために高い鋭いピークが見られないだけである。どう考えても全数把握ができていないのが実情である。しかし、この国では科学的な考察ではなく、多くの識者が日本の感染者数のパターンは特異的であると言う。自らが、科学的思考力がありませんと宣言しているようなものだ。

2類のウイルス分類のままに法律を厳格に適用すれば、今は違法状態である。それを運用という言葉で、現実的に対応しているのが、いかにも日本らしいところだ。なし崩し的に戦争に進むことを危惧している人たちも、この曖昧な現実に異を唱えることはない。日本医師会が「感染者の全数把握のなし崩し的な変更を是としない」と提言したと報道されていたが、憲法に反する法律を認めない原則から言えば、当然のことなのだ。国会を開いて、コロナウイルスの実情に即した法律を作るのが政治の役割だと思う。

コロナウイルスの性質も大きく変わり、治療法も2年半前と比べれば格段に進歩している。しかし、制度は何も変わっていない。当初のPCR検査抑制策が今日に至るまで是正されずに、世界的にはPCR検査後進国=科学後進国であることを晒した悪影響は大きいと思う。かつて、マレーシアのマハティール首相は日本を見習う「Look East」策を提言していたが、悲しいことに日本という国に対する尊敬は失われつつある。私も20年くらい前にマハティール首相来日時に朝食会でお会いしたことがあるが、非常に聡明で日本に対する敬意に満ち溢れていたが、本当に残念だ。

イノベーションを推進すると言うが、永田町と霞が関が、自分の周辺の利益しか考えない状況でいては絶対に日本の再浮上はない。最近、オリンピック関係者が逮捕されたが、卑しく自分の利益しか考えない人間が差配すれば、まともな若い人はやる気をなくし、利益に群がる姑息な人たちだけが生き残る。私の周辺にも、そんな腐臭を漂わせている人が、少なからずいる。そして、日本の腐敗は広がり、さらに奈落の底に落ちていく。

会社でもそうだが、国を生かすのも殺すのも、最終的には人材だ。若手の官僚にも科学者にも(政治家にもそんな人がいて欲しいが)国の将来を憂い、この国を立て直したいと考えている優秀な人たちがいる。このような憂国の士を見つけ出し(茶坊主に騙されないで)、将来を託するエリートとして育てる決意が政治に求められる。日本が尊敬される国であるために!

文・中村 祐輔

編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2022年8月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

文・中村 祐輔/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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