大人は子どもにも「優しい嘘」や「社交辞令」を求めていた

実験の結果、いわゆる「思いやりのある嘘・社交辞令」に該当するケースでは、大人たちは曖昧な真実や微妙な嘘を語る子どもよりも、真実を率直に語る子どもを厳しく評価すると判明。

また大人たちは、「隠れている妹」のシナリオで、「彼女は外にいるかもしれない」と真実を曖昧に語った子どもをもっともよく褒める傾向にありました。

つまり大人たちは「嘘はダメ」と言葉では言いつつ、「思いやりのある嘘」「社交辞令」「真実を曖昧に伝えること」が上手い子どもを高く評価していたのです。

親のこうした感情は、表情や態度など普段の言動で子どもに伝わります。

大人の嘘に対するスタンスは子供にも伝わる
Credit:Canva

子どもたちは幼いころから、真実と嘘に関して非常に複雑な環境で成長しているのです。

ブリンシバル氏も、「大人が抱える正直と不正直に関する矛盾が、社交的な影響として子どもの初期の行動を形成しているのかもしれない」と述べました。

子どもは成長の過程からして、大人の教育方針の建前と本音に向き合っていかなければならないわけです。

この微妙なニュアンスがうまく飲み込めず、嘘ダメと教わったから正直になろうとすると、逆に大人に叱られやすい状況になってしまうかもしれません。

昔から周囲に馴染めず、大人からも不条理な扱いを受けたという人は、こうした問題に実感があるかもしれません。

一貫性のない意見の中で子どもは育ち、複雑な価値観を持った人間へと成長していきます。

この大人たちの態度に対処できない子どもたちは、人生の最初のところで躓いてしまうかもしれません。

嘘と建前の使い方はどのように教えるのが正しいのでしょう? 今のところこの点については子どもが自分で気づいてくれるのを期待するしかなさそうです。

今後チームは、真実や嘘を語ることについて、子どもたちが受ける影響をさらに詳しく調査する予定です。

参考文献

Children who tell blunt truth, as opposed to lying, are judged more harshly by adults

元論文

Inconvenient truth-tellers: Perceptions of children’s blunt honesty