自然豊かな森や山を歩く「ハイキング」や「トレッキング」が好きな人は多いでしょう。
人間関係の煩わしさから解放され、大自然を肌で感じることでリフレッシュできるのです。
ところが実は、それらハイキングのコースである「トレイル」は、人工的にデザインされたものであり、科学的な根拠と計算にもとづいています。
トレイルデザイナーであるジェフリー・マリオン氏は、優れたハイキングコースをデザインする秘訣について解説しています。
ハイキングコース「トレイル」は人工的なものだった
トレイルとは、森林や里山などにある「歩くための道」です。
ハイキングする人は、周囲の自然を楽しみながらこのトレイルに従って歩くことになります。

そして、このトレイルを作ったり維持したりするには、人間の手が必要です。
例えば日本には、長野県と新潟県の県境に連なる全長110kmの「信越トレイル」があります。
さまざまな景色を楽しめるこのトレイルもまた、NPO法人、周辺自治体、協賛企業、整備ボランティアによって、維持管理されているのです。
また当然ながら、このトレイルを最初にデザインした人もいるはずです。

世界中のすべてのトレイルは、いわば「人工物」なのです。
では、優れたトレイルを作るための秘訣は何でしょうか?
トレイル設計を研究するジェフリー・マリオン氏の解説を紹介します。
トレイルは利用者の望みを反映している
トレイルのデザインは、まず利用者の望みを理解することから始まります。

ハイキングやトレッキングに来たトレイル利用者たちは、しっかりと舗装された道や完璧に管理された自然の中を歩きたいのではありません。
人間の手が加わっていない自然の中を歩きたいのです。
つまり、トレイルデザインの1つのポイントは、「手つかずの自然の中にいるよう感じさせる」ことです。

そのためにトレイルの形状は、あえて真っすぐにせず、枝や水路、雷などに見られる自然界のパターンを模倣して、曲がりくねった形に作られることが多いようです。
またトレイルの至る所で大岩や木が接するようにもします。

次に大切なのは、「利用者が訪れたい場所」と「訪れてはいけない場所」を見極めることです。
利用者が訪れるべきでないのは、危険地帯、私有地、環境が崩れやすい場所などです。
これらのスポットはトレイルのルートから外さなければいけません。

利用者が訪れたいのは、見晴らしの良い場所、滝、湖などであり、これらのスポットをトレイルで繋ぐと利用者の満足度が高まります。
逆に良いスポットを逃してしまうと、利用者がトレイルを無視して自分で新しい道を切り開こうとするかもしれず、大変危険です。
では、これら利用者の気持ちを適用するなら、優れたトレイルが完成するのでしょうか?
実は、デザイナーが最も気を遣うのは人間ではなく「水」だと言われています。