「Y’s for living(ワイズフォーリビング)」「MARGARET HOWELL(マーガレット・ハウエル)」「MHL.(エムエイチエル)」「WISLOM」など様々なブランドの企画・デザイン・素材開発に携わってきた藤内裕司(トウナイ ヒロシ)氏。
10月7日(金)、自身の名を冠したブランド「TOHNAI(トーナイ)」が、満を持してスタートした。
ファーストコレクションは、藤内氏の特徴が最も現れるアイテムのコート1型のみとなる。
「MATERIAL GEEK」がこだわるウール素材2種で創るコート
業界内で「MATERIAL GEEK」の異名を持つ藤内裕司氏。たっぷりとした分量感を持つ、独自ルートで開発したウール素材2種を、生地の面白さを存分に生かすシングルベルテッドコートに落とし込んだ。
裏付きのウールコート「FINE DOUBLE WOOL TWILL」
一つは、たっぷりとした分量感を持つ、裏付きのウールコート。フード裏や前立て裏などには薄手のウールギャバジンを使用することでスッキリとした感じに仕立てる。
ウール素材は、17.5ミクロンのニュージランドメリノを使用。細めの番手の糸でふっくらと心地よい厚みがある生地を目指して、接結糸に36中/2のシルクの糸を使い、美しい生地を開発した。
ダブルフェイスを織れる織機が少なくなり、その設計ができる職人さんも限られてきた中で、デザイナーが諦めきれずに織ってもらった至極の一品だ。
一重仕立てのウールコート「WASHED WOOL MELTON」
もう一つは、たっぷりとした分量感を持つ、一重仕立てのウールコート。フード裏と下前立てのカーキのアクセントカラーがポイント。
タテ、ヨコともに1/9.5の糸を繻子織りで織り上げたメルトンを、さらに60℃のお湯で洗い込むことで、程よく織り密度が詰まり、心地よい起毛感を感じる風合いを表現する。何シーズンも着て体に馴染んだ感覚を、初めて手にしたその日から感じられるようなコートだ。
2つのコートに共通するのは、最適な位置に配置した袖のポケットと胸ポケットに、スマートフォンやカードケース。大きめな腰ポケットにはロングウォレットを収納可能。フードとウエストの共ベルトでシルエットをアレンジし、釦は本水牛、共ベルトはレザーのクルミバックルを使用することだ。
初回デリバリーは、10月7日(金)。CIRCLE(東京 青山)・TF(東京 祐天寺)・WAGAMAMA(東京 渋谷)・AIBN TOKYO(東京 中目黒)・Lapel(福島)・diaries(茨城)・6DIRECTION(岡山)・fabric(広島)の各店舗で展開中だ。
デザイナーの藤内氏は、「物が溢れ、無いものは無い現代で、すばらしい生地・糸のもつ良さや面白さを感じられる服をつくりたいと思いブランドをスタートした。シワも美しく、歪みさえも愛おしい、陶芸作品のような服。ついつい捨てられずに10年、20年クローゼットに残り、思い返したように着たくなるそんな価値観をもった服をデザインする」と語る。
さらに、「服は原料・糸・織り・編み・染色・整理・縫製と様々の工程を経て、つくられるとし、工程に関わる人々との対話によって生まれるアイディアを大切にしたい」とも話す。
袖を通した時に心地よく、程よい高揚感を感じられる。そんな日常を生きていくための服を提案するという「TOHNAI」。大人だから着こなせる上質なコートの持つ素材の面白さ、こだわりのディテールに触れてみては。
(高野晃彰)