9月20日、神戸にて男性の鍛え上げた肉体美の階級別日本一を決める「オールジャパン・メンズフィジーク選手権大会」が開催された。地区予選を勝ち上がってきた猛者たちが集うこの大会。なかでも最も多くの選手が参戦したのが、47名がエントリーした40歳未満176㎝超級である。このクラスは世界ジュニア王者の穴見一佐選手、2018年度王者の小泉憲治選手、元ベストボディジャパンチャンピオンでトレーナー、フィットネスインフルエンサーとしても活躍しているシェレン・イースン佑太選手など強者揃いの階級。この激戦区を制したのが、元イケメンモデルという異色の経歴の持ち主である直野賀優(なおの・よしまさ)選手である。昨年は大会が中止となったため、2019年に続いての2連覇の達成だ。

「優勝することが義務だと捉えて、自分にプレッシャーをかけて取り組んできました。僕の場合、優勝以外の成績は全て後退してしまったことになります。このオールジャパンに出る限りは、負けることはあり得ないというつもりでやってきました。今回初めて連覇という形になりましたが、次からは3連覇、4連覇することが自分の義務だという気持ちで取り組んでいきます」

オフシーズンの間はトレーニングをハードに行いながら身体の成長に必要な栄養素をしっかりと摂取。結果的に111kgというヘビー級のプロレスラー並みの体重となり、そこから半年間をかけて調整。時間をかけて脂肪を削り落していき、今回の大会時の体重は82.9kg。約28kg、小学生3年生の平均体重1人分ほどの減量に成功した。

「基本的な食事内容は麦ご飯とむね肉です。9月に入ってからは水溶性の食物繊維を摂りたくて、麦ご飯にひじきを混ぜていました」

ただ、減量期間で半年というのは長い部類に入る。ときにはモチベーションが下がり、食の誘惑に負けてしまいそうになることもある。そんなのときの発奮材料になったのが、今年オールジャパン選手権3連覇を成し遂げたメンズフィジークの絶対王者、寺島遼選手の存在だった。

「8月からは週に1回、寺島くんに自分のお腹と体重計の数字の写真を送っていました。『いい感じだね』とか『まだまだ絞れるよ』とか、いつも尻を叩いてくれるんです。例年はチートデイと称してラーメンやピザを食べてしまうこともあったんですが、今年はここ2、3カ月はチートデイは入れていません。また、当初は85㎏に目標体重を設定して、そこに到達したら減量をストップするつもりだったんですが、9月の頭に寺島君と会う機会があって、そこでの寺島くん(の絞り具合)がえぐかったので、僕も減量を続けることにしました。今年は調子よく減量ができていただけに、これでコンディションを崩したら寺島くんに笑われると思って。それが怖かったです。寺島くんは僕にとってブースターのような存在です。同じ時代に生まれてよかったと思います」

きたる9月26日、大阪・メルパルクホールで行われる無差別級の大会「グランドチャンピオンシップス」では寺島選手と直野選手の直接的対決が実現する。ときにライバルは自分にとって最大の理解者にもなる。

取材・文:藤本かずまさ 撮影:中島康介