生息数の減少がたびたび問題視されている二ホンウナギ。

日本人にとっては欠かせないごちそうで、現在はいつでも食べられる身近な食材なのですが、年々漁獲量が減り、このままでは食べられなくなってしまう恐れさえあります。

そんな二ホンウナギの数を増やすため行われているのが、養殖ウナギの放流です。

しかし、一言で「ウナギの放流」と言っても放流するだけで終わりではなく、放流された養殖ウナギたちが繁殖することで初めて生息数が増えていきます。

果たして放流された養殖ウナギたちは天然ウナギたちと同様に過酷な自然を生き残り繁殖することができるのでしょうか?

今回はそんなウナギ放流の実態についての研究をご紹介します。

生息数が減っている二ホンウナギ

ウナギのかば焼き
credit:Pixabay

読者の皆様の中には「そもそもそんなに二ホンウナギって少ないの?」と疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。

確かに現在の日本では、季節を問わずどこのスーパーでもウナギを購入することができますし、土用の丑の日ともなれば外食産業がこぞってウナギの商品を販売していますから、そう感じるのももっともなことです。

しかし、地球温暖化による海洋環境の変動や生息環境の悪化、シラスウナギ(ウナギの稚魚)の乱獲によってウナギの生息数は確実に減っていっています。

絶滅危惧種である二ホンウナギ

うなぎ
credit:フォトAC

実はウナギはすでに絶滅のおそれのある野生生物が書かれたレッドリストに名前が上がっています。

レッドリストに書いてある生物種はすべてが絶滅危惧種ではなく、すでに絶滅したものや地域によっては絶滅の恐れがあるものなど様々なカテゴリーがあるのですが、二ホンウナギはすでに「絶滅危惧種(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)」として掲載されているのです。

ウナギは川から海まで非常に広く移動しながら生息しているため、生息数の正確な数値を把握することは困難とされていますが、漁獲量が1980年代以降ピーク時の1/4程度に低迷していることから見ても、個体数の減少は明らかです。

ウナギ安定供給のために行われている放流

3匹のうなぎ
credit:フォトAC

世界各国の中でも特にウナギ需要の多い日本では、そんなウナギの生息数回復を目指し、様々な取り組みが行われてきました。

ウナギの養殖も進化を続けていて、これまでの「稚魚を海で取ってきて育てる」という方式から、「養殖ウナギの卵を採取し稚魚から育て上げる(完全養殖)」に変わってきています。

これまでは消費者へのウナギの供給がゴールだったウナギ養殖ですが、完全養殖の技術が確立したことで、養殖ウナギを自然の中で繁殖させてウナギの生息数を増やすことも目指せるようになりました。

そこで積極的に行われるようになった取り組みが「養殖ウナギの放流」です。

しかし、実際に養殖ウナギが天然ウナギと同様に自然の中を生き抜き、繁殖して生息数増加に寄与できるのかはこれまで調査されていませんでした。

ここからは養殖ウナギに天然ウナギが及ぼす影響について調査した結果をご紹介していきます。