「未利用魚」から「美味しい寿司ネタ」へと転身を果たしたニザダイ。同じような「金の卵」がまだ身近な海に生息しています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
キャベツニザダイ寿司
回転寿司チェーン大手の「くら寿司」が先日、「キャベツニザダイ」というネタの寿司を期間・数量限定で販売し、話題となりました。
「キャベツニザダイ」は同社のSDGs の取り組みの一つ。代表的な未利用魚・低利用魚であるニザダイに商品価値を与えるため、同社が2020年からキャベツを用いた食味改良の研究を続け、生まれた新ネタです。
同年には店舗限定で試供し、反応は上々。量産体制を整え、このたび全国の店舗で提供する形となったようです。
魚がキャベツで美味しくなる?
この「キャベツニザダイ」というネタの特徴はもちろん「キャベツで畜養されている」こと。
ニザダイは温暖な海域に棲み、海藻を好んで食べる魚。近年の海洋温暖化に伴って関東地方以西で数を増やしており、海の砂漠化である「磯焼け」の原因魚のひとつと目されています。
資源量は増えており、また漁獲する意義もある魚ではあるのですが、海藻食性のために磯臭さが強く、とくに関東地方周辺では食材として流通する機会も少ない「低利用魚」だったのです。
同社は、三浦半島で食用に適さない痩せたウニに、廃棄キャベツを食べさせることで身入りを良くし、市場価値を向上させていることに着目。ニザダイにキャベツを食べさせることで食味をよくできるということを発見し、また廃棄物も減らせるという一石二鳥の手法を生み出したのです。
美味しくなりそうな草食魚
さて、このニザダイ同様に海藻食性を持ち、磯焼けの原因になっている魚は他にも少なくありません。
最も代表的なものはアイゴで、ニザダイよりも低水温に強く、広い範囲で数を増やしていることで懸念材料となっている魚です。こちらもニザダイ同様磯臭い魚として嫌われていますが、マダイとカワハギの中間のような身質そのものはよく、かつ脂も乗りやすいため、地域によっては美味しい魚として珍重されます。
他にはイスズミなども例に挙げられるでしょう。上記の2種を凌ぐほどの強烈な磯臭さで嫌われるが、ごく一部地域では磯臭くならないことが知られ、大きく成長することもあって食用にされるところもあります。
これらの魚がもしニザダイ同様にキャベツで美味しくできるのであれば、非常に魅力的です。今後の研究が待たれます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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