ウエルシアとベトナム事業が好調

上期好調も課題は山積み? 吉田昭夫社長が語った「イオンのこれから」
(画像=イオン九州とウエルシアHDは合弁会社「イオン九州ウエルシア」を立ち上げた、『DCSオンライン』より引用)

上期を振り返ると、まず経費の面において、原材料価格、物流費、人件費などコストが上昇した。とくに大きく影響したのは電気料金の高騰だ。上期の水光熱費は、前年同期から250億円弱も増加している。

ただ、店頭やバックオフィスでの節電に努めたほか、機器切り替え、レジ周りや店頭作業のデジタル化(による業務効率化)を進めていたことから、販管費全体ではコントロールできた。上期の成果を(下期以降も)継続的に出していくことで、(経費高騰による)経営へのインパクトを吸収していく。

売上については、ウエルシアホールディングス(東京都)が好調だった。コロナ拡大の中で検査キットや解熱剤のニーズを察知し十分な在庫を確保し売上を押し上げることができた。

また中長期目線での取り組みとして、イオン九州(福岡県)とともに「イオンウエルシア九州」を設立した。調剤併設型ドラッグストア(DgS)と、生鮮食品スーパーの強みをシームレスにつなぎ、フード&ドラッグを展開する。DgS業界では食品へのラインロビングが盛んだが、DgS企業が食品という新たな領域において本格的なインフラを構築するためには、M&A(合併・買収)や莫大な投資が必要になる。しかし、グループ企業同士のアセットやノウハウを組み合わせれば、短期間での業態構成が可能だ。

海外事業については、中国では引き続きゼロコロナ政策の動きなどを注視する必要があるが、アセアン事業はコロナ前消費への移行が日本以上に早いことから好調に推移している。

なかでも特筆すべきはベトナムで、上期営業収益はコロナ前の対19年度比で176%、営業利益も約2倍に拡大している。SPA型商品開発の積極化、中食需要の拡大に合わせた総菜売場の拡大などで、競合との差別化につなげている。このベトナムにおいては今後、ショッピングセンターやGMS、SM、コンビニエンスストアなどマルチフォーマットでの展開をめざす。

中計で掲げた6つの成長戦略に対する評価は…?

(21~25年度の)中期経営計画においては、「DX」「商品」「ヘルス&ウェルネス」「アジア」「ローカライゼーション」、これらに「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」を加えた、合わせて6つの領域での成長戦略を掲げている。

まだ1年半が経過した段階であるが、「DX」に関していえばネットスーパー事業では700億円くらいの売上をあげられるようになった。キャッシュレス化の取り組みも進んでおり、足元では有人レジが1レーンのみで、あとはセルフレジか「スキャン&ゴー」によるセルフ決済という、(レジ周りは)ほぼ無人の店舗もつくっている。SMにおけるレジの人件費率は25~30%に上るが、それをDXによって効率化するという目に見える成果が出始めている。とはいえ、DXの取り組み全体については全然満足していないし、まったくもって遅れているという認識だ。

「商品」については、PBの販売量をかなり伸ばすことができている。会社(イオン)にとってのPBの重要性を皆が認識し始めたことが大きい。

一方で課題なのは「ヘルス&ウェルネス」だ。現状、DgS事業に頼っているが、すべての事業がヘルス&ウェルネスを軸にすべきである。これについては来期、重点的に取り組んでいく。

「地域」に関しては、エリア単位での再編・運営はできているが、ここに”オンラインの網”が全然かけられていない。OMO(オンラインとオフラインの融合)を地域単位でできるようにしないといけないが、ここは遅れている

「アジア」は前述のとおりベトナムへの注力が数字に出ている。100点、とはいえないが満足はしている。ベトナムでは人員強化や用地確保を進めており、将来の国の伸びにわれわれが乗っかっていけるようにしたい。

そして「GX」については、いまだ社会貢献的なイメージにとどまっているのが現状だ。これをいかに「事業」としてとらえて取り組みを進められるかが課題だ。

提供元・DCSオンライン

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