日本の広い範囲で漁獲されながらも、あまり利用されてこなかったシイラ。しかしとある意外な理由でいま、この魚の価値が上がっています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
未利用魚のシイラの価格が高騰
若狭湾に面し、福井県を代表する漁港のひとつである小浜漁港。ここで最近、大型の食用魚であるシイラの好漁が続いています。
シイラは温かい海を好む魚で、黒潮の当たる太平洋沿岸の魚というイメージがありますが、日本海側の暖流である対馬海流に乗って福井沖までやってくるため、同県では毎年夏に漁獲があります。
水揚げも少なくなく福井県のプライドフィッシュにも認定されている一方で、実は我が国ではあまり需要がない「未利用魚・低利用魚」のひとつです。そのためこれまではシイラがたくさん獲れてもあまり喜ばれることはなく、文字通り投げ売りされることが多かったのです。
しかしそんなシイラが今年、突然「金のなる木」になっているといいます。しっかりとした浜値がつき、降って湧いた好況に市場も盛り上がっているようです。
ユニークさの塊・シイラ
シイラは上記の通り、暖流に乗って夏から秋にかけて我が国の沿岸にやってくる回遊魚です。釣りで針にかかると派手にジャンプするため、英語では「ドルフィンフィッシュ」と呼ばれます。
大きいと1mを遥かに超え、生きているときは黄色と青の美しい色合いをしています。この色合いのため熱帯魚であると思っている人も多いのですが、近年は北海道でも釣れるようになっています。
実は赤身
シイラは近縁のエビスシイラとたったの1属2種でシイラ科を構成しており、ユニークな点が多い魚です。
外見も、オスはおでこが大きく出っ張り一度見たら忘れない面構えをしています。そして中身についてもも、筋肉の見た目は白いですが、筋肉中の赤身成分であるヘモグロビン・ミオグロビンは多く含まれており、こう見えて赤身魚だったりします。
なぜシイラは高騰したのか
そんなユニークなシイラの価格がこの度突然高騰した理由はなんと「円安」。最近の記録的な円安により、国産のシイラが「外国市場において」魅力的な食材となっており、輸出需要が生まれたのです。
シイラのさっぱりとした白身は、生食や淡い味付けの調理ではあまり真価を発揮しない一方で、油を使った調理に使うと肉汁がジューシーで非常に美味になります。そのため我が国ではあまり価値の無い魚である一方、海外の各地で人気の高級魚となっているのです。
ハワイではマヒマヒと呼ばれ非常に珍重されているのが有名ですし、台湾やフィリピンなど南洋の島嶼国ではいずれも重要な食用魚となっています。海洋温暖化で我が国におけるシイラの漁獲量が増加傾向にあるなか、今後我が国における重要魚種となっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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