世界遺産登録が取り消しに

しかし、問題もある。工事を進めている地域一帯は、元々リバプールの海事商業都市として世界遺産に登録をされていたのだが、それが取り消されてしまったのだ。エバートンが「ブラムリー・ムーア・ドック」を再活用することが理由の1つとされている。

エバートンは、数百年も昔の歴史的建造物がそのまま立ち入り禁止エリア内に放置されている姿を目にし、クラブの一部として再度活躍させながら、ドックの歴史的な背景やストーリーを人々に知ってもらおうと動いた訳だ。しかし、その良かれと思ってした行動自体が、リバプール都市の世界遺産としての名誉を無くしてしまった理由の1つになった。

皆さんはどう思うだろうか。「ブラムリー・ムーア・ドック」から直接意見を聞けたら良いのだが、そうもいかない。施錠をされた立ち入り禁止エリアに、ただただ風化したドックを保存しておくよりも、歴史とモダンを掛け合わせた新たな役目をこのドックに与えることは、筆者としては良いことと感じる。


エバートン 写真:OneFootball

新スタジアムのキーワードは「All」

新スタジアムの名前はシンプルに「エバートンスタジアム」となる。

そして「All」というキーワードが存在する。全てとの繋がりを意味する「All」と、エバートンのクラブシンボルである三角屋根の塔の意味も頭文字の「A」に含まれている。新スタジアム建設プロジェクトのシンボルマークにもなっており、「All」が丸い円に囲まれているデザインで、円はファミリーサークルという意味を持つ。スタジアムを通じて、エバートンのサポーターはもちろん他地域も含めた人と人とが繋がり、そこから新たな関係をつくり出す機会を提供することを、クラブは強く掲げている。

エバートンスタジアムには複合施設のように、レストランはもちろんバーや宿泊施設、観光客用の設備なども併設される予定だ。例えば、サッカーに特に興味がない人がわざわざ行きたくなるような内容の施設になれば、そこでひょっとしたらサポーターとの出会いがあり、興味を持つきっかけになることもあるだろう。地域の人々の憩いの場所として愛される場所になる可能性もある。もちろん純粋に試合観戦に来たサポーターが、試合後に対戦相手サポーターと思考や経験などの違いについて、ゆっくりとバーで語り合うことも出来る訳だ。

エバートンスタジアムの収容人数は約52,888人で、グディソン・パークよりも約1万人多い規模に拡大する。多くの地域の人々からの熱い眼差しを受け、新スタジアムで輝くブルーのエバートンプレイヤーを観られる日が待ち遠しい。