森保監督が着手すべき布陣とは

直近2試合における日本代表の収穫は、ハイプレスからの速攻という、大まかなゲームプランがチーム内で共有されたこと。特にアメリカ代表戦では快足FW前田大然、フィジカルコンタクトに長ける鎌田大地、守備の出足が鋭い久保建英と伊東純也の両サイドハーフが森保一監督の先発起用に応え、獰猛なプレッシングから何度もチャンスを作った。

カタールW杯に向けて森保監督が着手すべきは、ハイプレスのバリエーションを増やすことだろう。

日本代表 FW鎌田大地 写真:Getty Images

アメリカ代表戦の前半では、相手の2センターバックを鎌田と前田の2トップが捕捉。更にこの2人が相手のパスを片方のサイドに誘導することでハイプレスを成立させたが、前述の通り、アメリカ代表が布陣を[3-4-2-1]に変えた後半開始以降はこの戦法が通用せず。カタールW杯のグループステージで、ボール保持力が高く、隊形変化のバリエーションも豊富なドイツ代表やスペイン代表と対戦することを踏まえると、[4-4-2]以外の守備組織の練度を高めることは急務だ。

ここで焦点を当てるべきは、森保監督がサンフレッチェ広島を率いていた頃(2012-2017)に採用し、アメリカ代表戦の終盤でも見られた[3-4-2-1]の布陣だろう。

この布陣のメリットは、ハイプレス時に[5-2-3]、自陣撤退時に[5-4-1]に変形することで、3バックでビルドアップを行うチームに対してもメリハリのある守備ができる点。相手の3バックに対し、1トップと2シャドーの計3人で数的同数の局面を作り、ハイプレスを仕掛ければ敵陣でボールを回収しやすい。仮にハイプレスが通用せず、[5-4-1]での自陣撤退を強いられたとしても、3センターバックと2ボランチで中央を固めることで、セカンドボールを回収できる可能性が上がる。4バックでは埋めにくい、センターバックとサイドのDFの間やハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、ペナルティエリアの両脇を含む左右の内側のレーン)をケアしやすいのも、5バックの強みだ。

日本代表vsアメリカ代表 写真:Getty Images

エクアドル代表戦の先発組やベンチ入りメンバーで、この布陣を組むことは可能だっただろう。ビルドアップ時に3バックを形成するエクアドル代表に対し、この布陣で応戦していれば、試合展開が変わったかもしれない。アメリカ代表戦とエクアドル代表戦の2試合で、この布陣を試す時間が短かったのが残念だ。

攻め込まれる時間帯が長かったなかで、アメリカ代表とエクアドル代表を相手に無失点試合を達成できたことは、ポジティブな要素と言える。遠藤航、田中碧、守田英正をはじめ、中盤での迎撃能力が高い選手が今の日本代表には揃っているだけに、相手の布陣や隊形変化に即したハイプレスのかけ方を実践できれば、ドイツ代表やスペイン代表に対しても接戦に持ち込めるはず。W杯前最後のテストマッチとなるカナダ代表戦(11月17日)で、森保監督にとって馴染みのある[3-4-2-1]の完成度を高めたいところだ。