知的能力や勉強不足とは関係なく、文字の読み書きが困難になる学習障害を「ディスレクシア(Dyslexia)」と呼びます。
日本では学齢期児童の約8%、英語圏では約10〜15%にディスレクシアの症状が見られ、学業不振や学校不適応の原因として問題視されています。
そこで大日本印刷株式会社(DNP)は、東京工業大学、ファシリティジャポン株式会社、株式会社リアルタイプと協力し、ディスレクシアの人にも見やすく読みやすい「じぶんフォント」を開発しました。
「じぶんフォント」では、それぞれの読み手に合ったフォントを提供することで、文字の読み書きの改善や向上を目指すとのことです。
記事内では「じぶんフォント」の読字体験ができるWebサイトも掲載しています。
ぜひ、お試しください。
「じぶんフォント」にはどんな特徴がある?
これまでの研究で、ディスレクシアの人にとっては、フォントの変更が読みづらさの軽減に役立つことがわかっており、英語圏ではすでに、ディスレクシア対応フォントの実用化が進んでいます。
日本国内でも、東京工業大の朱心茹(しゅ・しんじょ)氏が、ディスレクシア対応の日本語フォントの研究や試作を進めています。
その一方で、日本語の情報処理において、最低限必要とされる約7000字のフォント開発には、大きな負荷がかかっていました。
そこでDNPは、独自に開発したオリジナル書体である「秀英丸ゴシック」をベースに、朱氏と協力し、新たな「じぶんフォント」の開発をスタート。
開発にあたっては、Webアクセシビリティ技術を有するファシリティジャポン、フォント開発やWebフォントの配信技術を有するリアルタイプとも連携しました。
ディスレクシアの症状は人によって様々であり、「文字が踊ったり、ねじれるように感じて、どこにどの文字があるか分からない」とか、「字間が広いと読めるが、狭いと誤読が増える」「黙読が苦手で、本を読んでいるとすぐに疲れる」などがあります。
そこでチームは、ディスレクシアの人に協力してもらい、試作したフォントの評価・分析を行って、どういったフォントが読みやすく、好まれるかを調べました。
その結果、ディスレクシアの人が好む3つの傾向が判明しています。
(1)文字の下部が太い
(2)全体が細め
(3)全体が縦長で太め
これを踏まえて、チームは「どっしりまるご」「すっきりまるご」「はっきりまるご」の3種類のフォントを作成しました。
それがこちらです。
さらに、これらは、画線がシンプルで、先端や角が丸い「秀英丸ゴシック」をベースにしているため、デザインが手書きに近く、字間にもゆとりがあります。
具体的には、「い」は平たく、「く」は縦長にするなど、形状やサイズを整えすぎないようにしました。
こうした特徴は、読み書きに困難がある人に好まれる形状であることが、朱氏の研究で明らかになっています。
では次に、「じぶんフォント」を実際に体験して、自分に合ったフォントを探してみましょう。