リニューアル後は売上が30 %上昇!

このような、近年の大きな「高級腕時計ブーム」の波をとらえたタイミングでリニューアルオープンした、松坂屋名古屋店の「GENTA the Watch」。取材日時点では、2022年7月6日のオープンから20日あまりが経過したところだったが、「対前年同月比で売上が30 %増えた」と、長谷場氏たちは確かな手ごたえを感じている。
「当初の期待どおり、若いカップルやご家族連れのお客さまが増えている。また、外商のお客さまの息子さまなど、次世代のお客さまにもご来店をいただいている」(長谷場氏)
この「GENTA the Watch」では、売場のリニューアルだけでなく、来店動機を高めるさまざまな工夫を試みている。ウェブサイトも全面的にリニューアルし、コラムや検索機能を充実。また、気軽にスマートフォン上で装着感を体験できる「オンライン試着サービス」や、自宅にいながらオーバーホールを依頼できる「オンラインウォッチオーバーホールサービス」も開始した。
今回のリニューアルオープンはまだ一部のみの展開。10月の最終オープンに向けて、これから取り扱いブランドも少しずつ拡張していく方針だ。
各店舗の「強み」に特化し、地域での競争優位性を確立

松坂屋を運営するJ.フロント リテイリングでは、2021年~2023年の中期経営計画の重点戦略の一つに「店舗・コンテンツの魅力化」を掲げ、各百貨店が強みをもつカテゴリーの拡充に集中的に取り組む方針を示した。一例として、松坂屋上野店は本館7階の美術品売り場を約2倍に拡張した「アートスペース」をリニューアルし、強みである「アート」をさらに強化している。
今回の「GENTA the Watch」は、まさに松坂屋名古屋店の強みである「時計」をより拡充し、名古屋エリアでの競争優位性を確立していくものだ。
「時計売場だけが賑わっていても仕方ない。北館全体、ひいては全館への波及効果も高めていく必要がある。そうでなければやった意味が半減してしまう」(長谷場氏)
コロナ禍での大打撃から、少しずつ業績が回復しつつある百貨店業界。松坂屋名古屋店の「時計」への“賭け”は、今後の名古屋エリアでの消費動向、ひいては百貨店業界全体の動向を占う意味でも注目すべき一手だ。
提供元・DCSオンライン
【関連記事】
・「デジタル化と小売業の未来」#17 小売とメーカーの境目がなくなる?10年後の小売業界未来予測
・ユニクロがデジタル人材に最大年収10億円を払う理由と時代遅れのKPIが余剰在庫を量産する事実
・1000店、2000億円達成!空白の都心マーケットでまいばすけっとが成功した理由とは
・全85アカウントでスタッフが顧客と「1対1」でつながる 三越伊勢丹のSNS活用戦略とは
・キーワードは“背徳感” ベーカリー部門でもヒットの予感「ルーサーバーガー」と「マヌルパン」