政府はこれまで水際対策を段階的に緩和し、9月7日には添乗員が同行しない訪日パッケージツアーを認めたが、インバウンド回復に大きな効果を発揮していない。航空券や宿泊の手配をすべて旅行会社に任せる必要があり、自己手配を望む市場ニーズとの乖離を埋められていないからだ。加えてビザ取得義務や入国者数制限を課す日本はアジアの中で中国と並び厳格。政府は緩和を検討しているが、実行の時期が遅れるほどジャパンパッシング(素通り)が深刻化する懸念がある。
パッケージツアーでの自由行動が認められ、韓国などで旅行予約が増えるなど、一定の効果は見られる。だが、日本政府観光局(JNTO)の中山理映子理事は「本格的に需要が戻ってくるにはまだまだ」という。特に欧米豪は2週間近くに及ぶ旅行のため、手配をすべて旅行会社任せにすることを敬遠する。「それでも日本への関心はあるが、円安のなか、この好機を逃しているのはもったいない」(同)
需要の取りこぼしは国際会議でより深刻だ。JNTOによると、今年から来年にかけて開催が決まっていた大型会議が他のアジア諸国に流れた。厳格な入国条件と緩和見通しの不透明さから、主催者側に日本はリスクがあると判断された。国際会議は数年前に開催が決まるため、この先の誘致にも大きく影響する。
こうした状況に大きな危機感を抱く経済同友会は9月13日、個人旅行解禁などの早期実行を求める意見書を発表した。「この状況をいますぐに解決しなければ、今冬のインバウンド需要を取り込むことは難しい」と指摘。円安が続くなか、「日本経済のその負の影響のみが目立つことになる」と警鐘を鳴らした。
提供元・トラベルジャーナル
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