世界中で延べ6億人以上が感染し、640万人以上を死に追いやった新型コロナウイルス感染症。ここに来て、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長がパンデミックの終息について言及するなど、徐々に出口が見えてきた。日本でも第7波がピークアウト。落ち着きを見せ始めてはいるものの、現状では人口あたりの陽性者や死者の数は、世界的に見て多い。英・オックスフォード大学が運営するOur World in Dataで世界と日本の陽性者や死者の推移を集計、コロナの世界と日本の動きを比較した。

日本のコロナ陽性者は最悪時のヨーロッパに匹敵、しかし作戦は成功?
(画像=『BCN+R』より 引用)

8月、日本のコロナの状況は最悪だった。人口100万人あたりの陽性者数は4万9518人と過去最高を更新。終息に向かいつつある世界のエリア別陽性者数と比べると、その多さと急増ぶりに驚く。陽性者の絶対数が急増したことで、100万人あたりの死者数も増加。値は58.8で、オセアニアの57.3をわずかに多く、全エリアの値を上回った。陽性者数の多さからくる重症者や死者の増加には引き続き警戒する必要がある。

こうした日本の現状は、これまでの世界の陽性者数や死者数と比べどの程度のものなのか。世界で、人口100万人あたりの陽性者が最も多かったのは今年の1月。中でもヨーロッパが最多で5万1481人。次いでオセアニアで4万9611人。さらに北米が3万8524人で続いた。南米も同様に1月がピークだった。特にオセアニアはこれまで感染者が低く抑えられていたところからの急増。ウイルスの変異や感染力、感染経路などに大きな変化が生じたことを物語っている。8月に日本が記録した4万9518人という値は、このオセアニアの値とほぼ並び、ヨーロッパで記録した過去最悪の値に匹敵する高さだ。

日本のコロナ陽性者は最悪時のヨーロッパに匹敵、しかし作戦は成功?
(画像=『BCN+R』より 引用)

人口100万人あたりの死者数については、エリアによってピークにばらつきがある。2021年1月がピークだったのは、北米の229.3人とヨーロッパの218.0人。南米はやや遅れて21年4月にピークを迎え、309.1人と全世界で最悪の数値を示した。死者数の動きを見ると、21年の夏ごろまでが世界的に見て危機的な状況だったことが分かる。しかし、21年の秋から冬にかけて北米とヨーロッパで比較的小規模なピークを迎えたが、山は低く抑えられた。要因はワクチンの普及だ。

1度でもワクチンを接種したことのある人の数が全世界の人口に占める割合を集計すると、南米が大勢の死者に苦しんでいた21年4月時点では、わずか4.7%に過ぎなかった。しかし、9月以降接種率が4割を超えるようになり、明らかに死者の山は小さくなった。特に世界で陽性者が激増したこの1月前後では、北米やヨーロッパ、南米で死者数の増加はあったものの、陽性者数に比して、死者数は比較的小さく抑えられた。さらに今年の4月以降、接種率が64%を超えたあたりから、世界的に感染者数と死者数は終息のフェーズに入った。

もともとの日本のコロナ対策は、陽性者や死者の山を低く抑えながら、そのぶん時間をかけて終息させていくという作戦だったはず。患者の激増から生ずる壊滅的な医療崩壊を回避するためだ。結果的とはいえ、これまでは極端に大きなピークを作らず、比較的小さなピークでやり過ごすことができ。そこに、感染の大きな波が押し寄せた。しかし、ワクチンの普及もあって陽性者数の急増に比して死者数はかなり低い水準で抑え込めている。予想以上に長い時間がかかっているが、作戦は成功つつあるといえるだろう。感染の勢いがヨーロッパ並みに収まってくれば、終息は目前。あとひと踏ん張りだ。(BCN・道越一郎)

提供元・BCN+R

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