ブリと名前に付きながら、ブリとは別の魚である「ツムブリ」。非常にマイナーな魚ですが、実は本家ブリをも上回る美味しさがあります。

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ブリのようでブリではない『ツムブリ』 アジ科魚のいいとこ取りで美味

ブリが美味しくなる秋

一年中漁獲され市場に出回るものの、秋になると特に美味しくなる魚があります。その最も代表的なものはブリでしょう。

毎年夏が始まると、まず幼魚であるワカシ(関西ではツバス)が各地で獲れ始めます。彼らは成長が早い魚で、あっという間に大きくなり、秋にはワラサ(関西ではメジロ)と呼ばれる70cm前後の個体が多くなります。

ブリのようでブリではない『ツムブリ』 アジ科魚のいいとこ取りで美味ワラサ(提供:PhotoAC)

このサイズになると、全身に脂が乗ってきて、ブリらしい美味しさが味わえるために人気があります。ちなみにブリに似たアジ科の魚では他にヒラマサやカンパチがありますが、ヒラマサは夏が旬、カンパチは周年美味しいとされており、市場の中では季節ごとにブリとの「棲み分け」が行われているようです。

ブリであってブリではない「ツムブリ」

さてこの時期、たまに水揚げされて市場に並ぶことがある、とある魚があります。その魚はぱっと見はブリに似ていますが、体の中央に1本のきれいな青い縦筋が走っており、さらに頭が細く尖っていて、全身がきれいな流線型のシルエットをしています。

ブリのようでブリではない『ツムブリ』 アジ科魚のいいとこ取りで美味沖ぶりの名で売られることも(提供:茸本朗)

この魚は「ツムブリ」。ツムとは漢字で書くと「紡錘」となるのですが、ツムブリは頭部が尖り、後半身もスラッとしているのでまさにきれいな紡錘形となっています。

このツムブリ、英名ではレインボーランナーと呼ばれます。きれいな青いラインと高速で泳ぐ様子から名付けられたおしゃれな名前です。

未利用魚だけど絶品

そんなきれいかつかっこいいツムブリですが、大きいと80cmを超える大型魚であるにも関わらず、未利用魚と呼ばれるものの一つになっています。これはツムブリの水揚げ量が少なく、数がまとまらないため流通に乗ることが少ないのが理由。たまに市場に出ても大きさの割に大変安価になっていることが多いです。

ブリのようでブリではない『ツムブリ』 アジ科魚のいいとこ取りで美味ツムブリの刺身(提供:茸本朗)

しかし、その味はブリにひけをとらないどころか、個人的には上回るのではないかとすら思います。身質はブリというよりもカンパチやシマアジに似ており、しっかりとした歯ごたえと強い旨味があります。加えてブリにも負けないほど脂が乗っており、とろっととろける舌触りもあります。まさに、アジ科の魚に期待する要素をすべて兼ね備えていると言えるのです。

ツムブリはブリと同様に大きいほど味がよくなる一方で、小さい個体はブリと比べても魅力が少ないように感じます。値段は大きくても安いことがほとんどなので、大きい個体を見つけたら間違いなく買うべき魚だと言えるでしょう。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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