国内の湖沼の中でも特に外来種の数が多いと考えられる霞ヶ浦。ここで最近、また新たな大型外来魚が確認されるようになっています。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
ヘラブナそっくりな謎の魚
茨城県にある、東日本で最大の湖・霞ヶ浦。多くの淡水魚が生息する釣りのメッカで、特にヘラブナ釣りが盛んですが、最近ヘラブナの外道に、見慣れない魚が混ざると噂になっています。
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その魚はなんとなくヘラブナに似ているのですが、より角張って人工的な造形をしており、よりぺったんこで、体色が黒みがかっています。ヒレの形も特徴的で、腹ビレは横に広がり、背ビレはまるでヨットの帆のように縦に高く伸びています。
サイズも淡水魚としては大きく、ときに50cmに迫るようなサイズも釣れているようです。一体何者なのでしょうか。
新顔外来種「ダントウボウ」
この魚は「ダントウボウ」という中国原産のコイ科魚です。ブラックバス、ブルーギル、アメリカナマズなどすでに多数の外来種が生息している霞ヶ浦ですが、その中でも新顔となります。
2000年代中頃から霞ヶ浦の漁師によってその生息が確認されており、ここ数年は釣り人からの報告も相次いでいました。数もだんだんと増えているようで、以前は釣り人の間で「幻の変な魚」というイメージが共有されていましたが、一昨年頃からは狙って釣る人も出るほどになっています。
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そして今年に入ってからは湖内各所でかなり釣れるようになっており「ヘラブナ釣りに来たのにダントウボウばっかり」というような報告もネットで見られます。
実際に現地に赴いて水中を覗くと、これまでヘラブナやブラックバスがいたはずのポイントに、ダントウボウが群れをなしている様子も観察されました。
コイ科の魚では屈指の美味
このダントウボウがどのようにして日本に移入したのか、詳しいことはまだよくわかっていません。生態についても謎が多く、なぜ急に増殖したのかもよくわかっていないのです。
そのため今後、ブラックバスやオオタナゴ同様に「侵略的外来種」として認識される可能性もあり、扱いには注意が必要な魚と言えます。生きたまま持ち運ぶ、他の水域に移植するなどといった行為は控えるべきでしょう。
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実は美味
一方でこのダントウボウ、原産地では美味な食用魚として認識されています。自分も実際に捕獲し食べてみましたが、骨は多いものの白身魚と青魚の良いとこを併せ持つ味という印象。臭みも少なく、皮目のトロッとした食感や脂の乗った腹身の質感もよく、淡水魚の中では最も美味しいものの一つではないかとすら感じました。
もし、釣りの外道などで顔を見る機会があったら、持ち帰って食べてみることをオススメします。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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