2017年の日本ボディビル選手権をまえにトップビルダー田代誠選手が取り組んだ8分割トレーニング。日本最高峰の大会を目前に控え、田代選手が取り組んだその内容とは。
「このままでいけば2位や3位は狙えるかもしれないが、それでは面白くありません。基本種目を大幅に変えたりすることはありませんが、毎年何かチャレンジしていきたいです」
ここで言っている順位は日本選手権のことではなく、その先の世界選手権を指している。昨年(2016年)は世界4位という結果を残した田代選手が、今年も世界選手権の出場権獲得に向け、日本選手権に挑む。
「昨年の世界選手権が終わった11月下旬から、それまでの7分割から8分割に増やしました。8分割は4年くらい前にも試したことがありますが、検証できていないまま半年くらいでやめてしまっていました。分割しすぎると次に同じ部位が回ってくるまで時間がかかりますし、トレーニングできない日があるとさらに空いてしまうのが嫌でした。ただ、今年に関しては胸や背中のトレーニングを増やしたいと思ったので、久しぶりに8分割にチャレンジしています」
田代選手の分割は次のとおりだ。
①胸②背中③肩④ハムストリングス⑤胸⑥背中⑦腕⑧脚前面。胸と背中を2回に分けて、種目を増やしている。腹筋に関してはやる日を決めていないものの、週に1~2回はやっているそうだ。オフ(休息日)は設けていないという田代選手だが、仕事の都合でできないこともあるので「勝手にオフが入ってしまう」というのが実際のところだ。
「胸は上部の日、下部と中部の日で分けています。背中はロウイング系とプルダウン系で分けます。プルダウンの時はプルダウンしかやりません。うまくいくか分からないけど、やるのであれば昨年とまったく同じことはしたくないという気持ちです。うまくいっているかどうかは絞ってみないと分からないですね」
田代選手が減量を開始したのは5月10日。86㎏からスタートしてそれから約3カ月(8月時点)で11㎏落とした。1カ月に4㎏ぺースで落としていくが、その減量方法はいたってシンプル。減量スタートした時点からカーディオを入れて、余計なものを食べないだけ。
「朝か昼におにぎり1個分の白米( 約200g)を食べて、その他に取る炭水化物といったら、トレーニング前のエネルギードリンクくらいです。プロテインの量は変えません。あとはカーディオの量で調整します。それで、お腹が空いたり、疲れたという感覚もありませんし、トレーニングで力が出ないということもないので、調子はいいです」
減量はある程度は簡単だが、選手として究極を目指す場合は、奥が深く難しい。大ベテランの田代選手であっても不安も感じることもあるという。
「減量が止まる時期は、やっぱり不安になります。その時々で環境も異なり、年齢も違うわけですから、そういうときは、このままいくべきか、変えるべきかと思う時はあります。全ての選手が日々葛藤するわけで、経験者はその頻度が少ないだけです。大会に出始めのころは減量でイライラすることもあるでしょう。経験の浅い選手についてはぜひ周りの方に理解してもらいたいと思います。ステージでポージングパンツ一枚で立つわけですし、自分の仕上がりが本当にこれで大丈夫なのかと不安になる気持ちもよく分かります。それだけ真剣なんです。まあ、10年も20年もやっているのに毎回イライラしている人はさすがにダメだと思いますが(笑)」 大会は経験がものを言う。だからこそ最初のうちは出られる大会には全て出た方がいいと田代選手はアドバイスする。
「自分の中の経験値をどう高めるかといったら、大会に出るしかない。通用するしないは別として、出られる試合は全部出た方がいいです。私も昔は一番多い時で、九州クラス別、西日本、ジャパンオープン、全日本、世界選手権と年5回出ました。よく1年はオフをとって“ためる”という方もいますが、1年出なかったところで筋量が極端に増えるわけではないので、経験を積む上では毎年出た方が絶対にいい。できるだけ多くの試合にチャレンジして、経験を自分の中で積んでいった方がいいです」
田代誠選手が初めて日本選手権に出たのは1998年。初出場で小沼敏雄選手、谷野義弘選手に続いて3位に入ったことで、一気に全国区に名を知られることとなった。その当時を知る田代選手からすると、近年の日本選手権の比較審査のやり方について要望もあると言う。
「最近は比較審査の回数が、昔よりも少なくなっているように感じます。個人的には、もっといろいろな人を呼んで何度も比較してほしいです。レベルの高い審査員が揃っているので、最低限の比較で順位をつけられるのは分かります。ただ、せっかく苦労して仕上げてきたので、誰とでもいいから、規定ポーズをいっぱい取りたいというのが昔からの希望です。順位関係なく誰とでも比較して欲しいです。脚が太い人、腕がでかい人など、魅力がある選手同士を比較するのも面白いと思います」
昔の話になりますが、私は初めて出た全日本で小沼さんと比較してもらえたことが一番嬉しかった。無名の私を、審査員の誰かが勇気をもって呼んでくれたんでしょう。それがなかったら初出場で3位にはなれなかったと思っていますし、その後ミスター日本にもなってなかったかもしれません」
取材・文:IM編集部 撮影:北岡一浩
提供元・FITNESS LOVE
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