日本の食卓に欠かせないイワシ。一般的にはマイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシの3種をイワシと呼びますが、今「もう一つのイワシ」が徐々にポピュラーになろうとしています。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
イワシの「秋の旬」到来
日本の食卓に欠かせない魚であるイワシ。しかしその「旬」については、昔から様々な議論が存在します。イワシと一口に言っても様々な種類があり、また代表種であるマイワシは地域によって旬が変わるなど、変数が多いのがその理由だと言えるでしょう。
ただ、関東周辺では「イワシの旬は秋」と言っておけば、あまり差し障りはないかもしれません。一般的にイワシと呼ばれる、マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシのいわゆる「イワシ御三家」のいずれも、秋は味が良いためです。
まずマイワシは、全国的に6月の「入梅鰯」が旬を表すものとして知られていますが、もとより脂乗りの良い魚で秋口まではとろっとしたした美味しさを味わえます。同様にウルメイワシもなんとかこの時期までは脂が感じられます。そしてカタクチイワシはむしろこの時期から脂が乗ってくるのです。
「第4のイワシ」が北上中
さて、一般的にイワシというと上記の「御三家」を指します。しかし近年、また別のイワシが数を増やしつつあるのをご存知でしょうか。
そんな「第4のイワシ」とは「カタボシイワシ」です。漢字で書くと「硬干し」ではなく「肩星」、和名の通り頭の後方に黒い模様がありますが、マイワシのように多くはありません。
カタボシイワシ
温暖な海を好む南方系のイワシで、温暖化に伴い生息域が北上しているものと見られています。かつては南九州以南で水揚げされるものでしたが、最近では相模湾でもコンスタントに水揚げされるようになり、ときに東京湾内でも見られるといいます。
味はイワシというよりニシン
このカタボシイワシ、マイワシやウルメイワシと同じくニシン目ニシン科の魚ですが、イワシのような断面の丸さはなく、コノシロとマイワシの中間的な見た目をしています。
捌いてみると、身質自体はマイワシのようですが、サッパやコノシロのようなしっかりした小骨がたくさん入っています。そのため鹿児島などでは「ホネイワシ」と呼ばれており、食用としてはあまり歓迎されていないようです。
マイワシやウルメイワシと比べると血合いが大きく、鮮度落ちが早いのも欠点でしょう。しかし夏から秋にかけてはマイワシ同様によく脂が乗っており、青魚独特の心地よい風味も強く、まるでニシンのような美味しさがあります。細かく骨切りをして煮付けにしたり、薄くスライスして酢じめにしたりすると美味だといえるでしょう。
今の温暖化傾向が続く限り、カタボシイワシの水揚げは今後も増えていくと思われます。せっかく獲っても未利用魚で終わってしまうというのは残念なので、みんなで活用法を考えておくべき魚ではないかと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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