週どのくらいトレーニングすればいいのか、どんな内容が効果的なのか。トレーニーなら知っておきたい疑問の数々をボディビル世界チャンピオンの鈴木雅選手に答えてもらった。
取材・文:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩、みつる
Q:トレーニングを始めたてのころは何分割にした方がいいですか?
A:トレーニングのスケジュールにもよりますが、最初は1回で全身を鍛えるメニューがいいでしょう。もしくは、毎日トレーニングができるようでしたら、2分割がいいと思います。
上級者になると4分割とか5分割とか細かく分けて、ひとつの部位に対するトレーニングの量を増やしていきます。しかし、トレーニングを始めたばかりのころは、まだ「筋肉を使う」ということに慣れておらず、筋肉の感覚が発達していません。その感覚にフォーカスするために、高頻度で刺激をしていくのが望ましいです。また、最初は筋肉そのものが発達するというよりも、どちらかといえば「筋肉を使う」ということに対して神経系が発達していきます。その訓練のような意味で、高頻度に刺激していくのがいいと思います。
そうしたメニューを続ける目安としては、神経系の発達には個人差があり、またトレーニングの頻度にもよりますが、短くて4週間から8週間、長くて12週間といったところです。
なお、いくら高頻度とはいっても、全身を毎日トレーニングするのはよくありません。トレーニングをすることで筋肉には微細な損傷が起こります。回復させるために休養が必要です。
トレーニングの間隔に関しては、これも個人差があり、また1回のトレーニングの量にもよります。目安としては、「前回よりもいいトレーニングができそうだ」と感じたら、そこでやりましょう。
Q:下半身を鍛えたほうが、上半身の筋肉も肥大しやすいのですか?
A:下半身を鍛えるメリットの一つは血流量です。下半身のトレーニングをやることで血流量が増えます。血流量の増加は、筋肉の発達にとって重要な成長ホルモンやテストステロンの分泌にも関わってきます。
またもう一つ、機能の面から考えると、下半身を鍛えることで正しいトレーニングフォームの土台ができてきます。例えばベントオーバーロウイングなど、下半身で支えながら上半身を動かす種目は非常にたくさんあります。土台となる下半身がしっかりとすることで、上半身の出力も上がっていきます。さらには下半身を鍛えて姿勢が改善することで、上半身の筋肉もバランスよく発達していくことが考えられます。
Q:1回当たり20~30分のトレーニングでも効果は出ますか?
A:トレーニングの内容によると思います。トレーニングの質を考える場合、そこで問われるのは時間とか量とかではありません。20分とか30分とかのトレーニングでも、しっかりと筋肉を刺激できれば効果は出ます。
ただし、これは増量したいときもそうなのですが、特に減量をしたいという場合、食事は重要な要素になってきます。さらに、食事にプラスして、日常生活でもよく歩くようにするなど、活動量を増やすことが必要になってくるかもしれません。
Q:すべてのトレーニングはオールアウトしたほうがいいでしょうか?
A:まず「オールアウト」ですが、その定義は人によって異なり、曖昧な部分があります。私が考えるところの「オールアウト」は、「1セットでどれだけ自分の力を出せるか」というところです。つまり、1セットの中でどれだけトレーニングの質を高めていくか、1セットの中でどれだけ濃いトレーニングができるか、そこが重要になってきます。1セット内で力を出し切るようなトレーニングを継続することが、筋肉の発達にとっては大事だと考えます。
鈴木 雅(すずき・まさし)
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。DMM オンラインサロン“ 鈴木雅塾”は好評を博している。
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。
提供元・FITNESS LOVE
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