少子化対策で子供を産みやすくする政策がいろいろ議論されていますが、フランスのように婚外子が社会的に認知されている国と違い、子供を作るには結婚→出産という流れが前提である日本にとって結婚観を理解しないことには少子化の抜本的対策にはならない、と私は考えています。

では日本人の結婚観とはどんなものなのでしょうか?

少子化問題の前に結婚観:もはや結婚は異次元の世界
(画像=kokouu/iStock、『アゴラ 言論プラットフォーム』より引用)

「結婚こそ幸せ」は戦後の常識であったといってよいでしょう。女性は良妻賢母となるために茶道や華道からhomemaker (主婦)としてのたしなみを学ぶために短期大学で学ぶという流れが生まれます。これをあまり声高にいうと批判が出るので小さめの声で申し上げますが、昔は「オンナが大学に行ってどうする!」と言われる中、女性の高等教育の一環として短大が爆発的拡大をし、学問のみならず、スキルを身に着ける流れが生まれます。

しかし、女子にフォーカスした短大は明らかに過渡期であり、中途半端でありました。職業訓練的なものであれば専門学校や高専という選択肢もあります。事実、高専の就職率は極めて高く、専門的技能を習得し、将来の社会的自立を考えるなら下手な短大に行くより有利であります。また、4年制大学に進学する女子も増え、短大は今では大廃校時代を迎えています。今の状態が続くなら20年後にはレアな存在になるかもしれません。

企業の期待感も変わります。昔は「お茶くみ、コピー取り」という業務があったのですが、今はそのような補助業務は大幅に減少したか、自分でやる時代で短大卒の学歴が光りにくくなったこともあります。

更に女子の4年制大学進学で高学歴化となるに従い、高学歴、正規雇用者となり、「結婚こそ幸せ」という結婚願望が少なくなるとする研究もあります。

そもそもなぜ結婚しなくてはいけないかであります。昔は親や廻りが「見合い」をさせ、とにかく適齢期を外さないよう「押し込んで」いました。「親がうるさくて…」と友達に呟いていた人も多いでしょう。いうなれば結婚は子供が成長する過程において親が影響力を発揮できる最終ゴールでもありました。そこを乗り越えればいつかは「孫の顔が見られる」という親の願望を満たす可能性は一気に高まります。

しかし、子供は親の背中を生まれながらにして見てきました。自分の親にみる夫婦生活が理想なのか、当然、自己価値観は芽ばえているのです。お勤めのお父さんは毎日遅いご帰宅、週末は「平日疲れを癒すこと」に専念されると父親の存在意義、そして夫婦の意味を考えてしまうのでしょう。

ならば子供は一人で暮らした方が生活費は自由で気まま、自宅から通えばお金は貯まるということになります。これは男性も女性も同じです。ましてやSNSで自分の好きな部分だけで繋がれる社会が生まれると90%の自分は別に置いておいて、10%の自分が興味や考え方が似ている人が集うオンラインやリアルイベントで盛り上がります。つまり90%の自分をさらけ出す必要は全くないのです。これが結婚のプロセスにおいてもっと恐ろしい「パンドラの箱」になるのです。

そうとも知らず仲良しの二人が結婚してもある時、「あれー?、こんなはずではなかった」ということは当然起きます。それが統計にも出ているわけで離婚数は2019年で21万組弱あります。では結婚はといえば、2020年で53万件弱です。しかも2019年から7万組強下落しています。コロナだったからという理由はあまりたたない気がします。好きなら結婚するし、結婚式は後でやるという選択肢もあるからです。

この結婚数と離婚数の比較はapple to appleではないのでそのままの数字を単純に利用できません。なぜなら離婚した年層は幅広いものの婚姻した年層はばらつきが少ない上にそもそもの母数が違います。それでもこの婚姻数から引き出される子供の出生数は推して知るべし、でしょう。

今般、衝撃的なデータとして一部で話題になったのが国立社会保障 人口問題研究所が2020年の数字を基に算出した50歳時点での未婚率です。なんと男性28.3%、女性17.8%です。もはや、結婚は異次元の世界なのかもしれません。

2015年とちょっと古いですが、公益法人生命保険文化センターの調査によると結婚したい男性は55%、女性が59%あります。面白いのは過去の推移からは男性のデータ特性はないものの女性は1997年の43%から16ポイントも上昇しているのです。つまり結婚したいけれど、相手が見つけられないことと実際に結婚に踏み込めない人もいそうです。

個人的には女性の結婚観、つまりハードルが高い気がします。高学歴高収入、世間並み以上の見栄え、性格は優しく、姑との関係も悪くなさそう、できれば長男ではなく…と絞ると男性からは「それはムリ」になります。またブランドものとファッションにお金を費やすのをみると彼女ならいいけれど結婚となれば別と思う男性もいるでしょう。王子さまはそんなにいないし、王子さまが結婚後を幸せにするとも限らないことだけは男としてどうしても言っておきたい点です。もちろん、この真逆の話も当然ながら成立します。

社会が家族を必ずしも必要としなくなればこれは日本の国体が維持できるのかという議論が当然出てきます。我々の生きる社会はあまりにも急速に変化し、人々の価値観を根幹から揺るがしているともいえそうですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年7月17日の記事より転載させていただきました。

文・岡本 裕明/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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