共通症状の元となる脳回路を遮断する薬は汎用的な「抗病気薬」になる

共通症状の元となる脳回路を遮断する薬は汎用的な「抗病気薬」になる
Credit:Nature . Neuronal culprits of sickness behaviours

今回の研究により、さまざまな感染症において共通してみられる「具合が悪い」状態が、脳に存在する特定の脳回路(Adcyap1など)によって引き起こされていることが示されました。

同様の結果は、以前に行われた別の『Nature』に掲載された論文でも報告されており、終板脈管器官(OVLT)や腹側の内側視索前野(VMPO)には、感染に反応して「暖を求める行動」「食欲不振」「深部体温の調節」などを促す脳回路が存在していることが示されています。

そのため研究者たちは、脳に存在する脳回路には共通症状のなかで担当する症状があり、他の脳回路と協同することで最終的な「具合の悪さ」を演出していると結論しています。

また同様の仕組みが人間にもある場合、特定の脳回路を遮断することで共通症状に的を絞って抑制する「抗病気薬」が作れる可能性があります。

(※ただ抗ウイルス薬や抗生物質と異なり抗病気薬は病気の原因を取り除くのではなく、病気の共通症状を和らげる効果しか期待できません。病気で休まなければならない状況なのに抗病気薬を飲んでガンガン働いてしまえば、結果的に病気の悪化をまねくこともあるでしょう)

研究者たちは今後、Adcyap1ニューロンの活性化がどうやって体の「具合の悪さ」を生み出していくのかといった、続くメカニズムを調べていくとのこと。

もし効果的な「抗病気薬」が完成すれば、新型コロナウイルスによって引き起こされる長引く共通症状に対して、有効な治療アプローチにもなるかもしれませんね。

参考文献

Neuronal culprits of sickness behaviours
Infection Activates Specialized Neurons to Drive Sickness Behaviors

元論文

Brainstem ADCYAP1+ neurons control multiple aspects of sickness behaviour