我が国の淡水性のカニの中では最もポピュラーな食材であるモクズガニ。全国的に食べられるカニですが、その食べ方にはいくつか共通点があります。

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淡水のモクズガニ漁が最盛期迎える 潰して飲むのが通の食し方?

モクズガニ漁が最盛期

福井県永平寺町を流れる九頭竜川でいま、名物のモクズガニ漁が盛期を迎えています。

淡水のモクズガニ漁が最盛期迎える 潰して飲むのが通の食し方?モクズガニ(提供:PhotoAC)

モクズガニとその漁は、秋の訪れを感じさせる存在として県民に親しまれている存在。例年通り8月中旬に漁が解禁され、9月に入って最盛期となっています。

今月3日には、地元の漁師が仕掛けた4つのカゴから40匹あまりのカニが出てくることもあったそうです。

モクズガニってどんなカニ?

モクズガニはその大きさや淡水に生息することから、特別な種と思われがちですが、磯でたいへんよく見かけるイワガニと同じイワガニ科に属するカニです。ただし同科のカニの中ではかなり大きくなる種で、大きなオスだと甲羅の幅が8cmほどになることも。

両方のハサミ(鋏脚)に藻のような毛が生えているのが名前の由来なのですが、しばしば「モズクガニ」と間違われてしまっています。「藻屑蟹」という漢字の字面で覚えると間違いが少ないかもしれません。

淡水のモクズガニ漁が最盛期迎える 潰して飲むのが通の食し方?ハサミの毛が特徴(提供:PhotoAC)

モクズガニはサケやウナギと同じように、川と海を行き来する「両側回遊性」を持ち、海で生まれて成長に伴い川を上り、産卵のためにまた降りてくるという習性があります。ときに100km以上も移動することがあり、大河の最上流域でも見かけます。

水生甲殻類の中では比較的水質汚染に強い方で、全国の川の河口付近から上流域まで普通に見ることができます。海と繋がる場所ならどんなところにもいて、ときに溝のような場所で見られることも。

潰して飲むのももうまい

そんな身近なモクズガニですが、実はあの超高級食材「上海蟹」と非常に近縁のカニです。そのため味は大変良く、古くから全国で食用にされてきました。特にミソが美味しく、また身の味もカニ類屈指です。

淡水性のカニでは最も大きくなるもので、海から離れた内陸部では貴重なカニ食材。そのため海のカニ同様に蒸しガニにされたり、煮付けて食べられたりしてきました。素晴らしい出汁が出るため、炊き込みご飯の材料とする地域もいくつかあります。

一方、海のカニと比べるとどうしても小さく身も少ないことから、殻を剥いて食べるのは面倒です。そのため「潰して食べる」という方法も非常にポピュラーなものとなっています。

淡水のモクズガニ漁が最盛期迎える 潰して飲むのが通の食し方?がん汁(提供:PhotoAC)

一番多いのは、モクズガニを水を加えながらまるごと潰し、エキスを濾して加熱し、味をつけた「がん汁(かに汁)」という調理法。潰した状態では灰色の濁った汁ですが、加熱することでタンパク質成分が団子状に固まり、透明な汁と分離します。

醤油または味噌で味付けし、ナスなどの具材を入れたりするなど地域性が豊かな料理です。味はまさに「飲むカニ」といった感じで非常に美味! 作り方も簡単なので、モクズガニが手に入ったらぜひ一度作ってみることをオススメします。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>  

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