水族館の人気者であるイルカですが、我が国にはイルカ食文化も残っています。地域によってはポピュラーな食材で食べたことがある人も少なくないと思いますが、中にはほとんどの人が食べたことないだろうと思われる非常に希少な部位も存在します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
和歌山・太地でイルカ漁スタート
イルカ・クジラ漁で世界的に知られた和歌山県太地町で9月2日、イルカなど小型鯨類の追い込み漁が実施されました。
同町漁協に所属する「太地いさな組合」の船団12隻が、同日午前5時ごろに出港。約1時間後に9kmほどの沖合でハナゴンドウの群れを見つけ、同町の畠尻湾へ追い込み、約10頭を捕獲しました。食用となるイルカの漁獲は今季初めてだそうです。
漁にあたっては反捕鯨組織によるテロ活動を警戒し海上保安官や県警の警察官らが見回りを行いましたが、妨害活動はなかったそうです。
追い込み漁は来春まで続けられます。
各地に残るイルカ食文化
水族館の人気者であるイルカを「食べる」と聞くと、ぎょっとする人は多いのではないでしょうか。
しかしイルカはクジラの一種であり、鯨食文化が長い我が国では食材として決してマイナーなものではありませんでした。世界的に有名となった和歌山・太地町周辺の他にも、岩手・宮城など三陸地方、千葉、静岡、沖縄には、今でもイルカ食文化が残ります。
我が国は1987年から30年以上にわたり商業捕鯨をストップしていたため、その間にクジラ(大型のヒゲクジラ類)の肉は高級品になってしまいました。
しかし、細々ながら沿岸で漁獲され続けてきたイルカ(小型のハクジラ)の肉は、今でも比較的安価です。上記の土地ではスーパーでも普通に売られておりイルカ肉を使った惣菜も購入できます。
イルカの鰭「すまし」
さて、基本的にイルカの部位で食用にされるのは、筋肉と腸などの内臓の一部くらいです。しかし、静岡のごく限られた地域ではイルカの「鰭(ひれ)」を食べる文化があります。
伊豆を中心に静岡の広い範囲でイルカ食文化は残っているのですが、鰭を食べるのは県内でも静岡市清水区蒲原周辺のごく一部です。商品としてはなぜか「すまし」と呼ばれています。
このすましは、茹でたイルカの鰭を薄くスライスし、塩漬けにしたもの。そのまま食べるとまるでゴムのような弾力と強い獣臭があり、食べる人を選びます。しかしさっと炙って食べると、脂がはぜて香ばしくなり、食感も良くなります。また個人的には「味噌汁」に入れると、風味も緩和され、汁にもコクが出て最も美味しく食べられると思っています。
絶滅寸前の珍味である「イルカのすまし」、チャンスがあればぜひ食べてみてほしいものです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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