かつてはムニエルなどの具材として一般的だったニジマス。しかし最近、出荷量がかなり減ってきているようです。
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回転寿司でサーモンが不動の人気
水産会社大手マルハニチロが先日、今回で11回目となる「回転寿司に関する消費者実態調査2021」を実施しました。それによると、人気ネタランキング1位は今年も「サーモン」となったそうです。なんと11年連続、この調査が始まって以来ずっと1位を取り続けていることになります。
ただ人気であるだけでなく「最初に食べるネタ」、「シメに食べるネタ」、「1.5倍の価格に値上がりしても食べたいネタ」などの質問項目でも1位を獲得しており、まさにスキがありません。
これほどの人気の理由は、アトランティックサーモンの脂ののりの良さや、トラウトサーモンを使ったネタのバラエティの多さなどではないかと考えられています。今後もしばらくこの地位は揺らがないのではないでしょうか。
「ニジマス」の人気は下降中
一方、そのトラウトサーモンと同じ魚である「ニジマス」の食用魚としての人気は、残念ながら低下の傾向がはっきりしています。というのも、全国的なニジマス生産量の減少が著しいのです。
例えば、ニジマス養殖全国2位の長野県では、1985年に4000tほどあった生産量が、2021年までの過去5年間平均では600~700tほどとなっており、約6分の1まで落ち込んでいます。
これは、魚介類の高級志向や、ブリ・サケなど人気の魚の養殖技術が向上し安価に手に入れられるようになってきたこと等によるニーズの変化によって、ニジマスが徐々に市場における存在感を失って来てしまっているのが理由ではないかと考えられています。実際、肌感覚でもニジマスをスーパーなどで見かける機会はかなり減っているように思います。
エサの価格が高騰
加えて、餌の原料となる魚粉の国際価格が高騰しているのも、ニジマス養殖業に悪影響を及ぼしています。ニジマスは大衆魚として認識されているため値段を極端に上げることができず、儲からない魚種となってしまっているのです。
これらの理由から、消費市場だけでなく生産地においてもニジマス離れが進んでいるのです。
ニジマスの高級ブランド化
そんなニジマスですが、逆説的に言えば「大衆魚路線をやめれば」まだまだポテンシャルがあるとも言えます。そして実際、いま全国各地で「高級ニジマス」がどんどん開発されています。
ニジマス生産量全国1位の静岡県では「紅富士(あかふじ)」と名付けられたブランドニジマスが生産されています。赤富士は2012年に開発されて以来年々出荷量が増え、2021年度は年間およそ80tを出荷するまでに至っています。9年間で3倍以上になっているそうです。
また栃木には「ヤシオマス」というブランドニジマスがあります。これは通常のニジマスの受精卵を加温処理することにより、性成熟が起こらないように改良したもの。生殖巣に栄養を取られることがないため、成長すると2~3kgと大型になり、肉質も締まっています。県内のホテルやレストランのみで食べられ、観光商材としても優良なものとなっています。
さらに隣の群馬でも「ギンヒカリ」というブランドニジマスが開発されています。ニジマスは一般的に2年で成熟しますが、中には3年かけてより大型になる個体があります。そのような系統のみを選別して養殖したものがギンヒカリです。こちらも大型で身の色が濃く、生食用の高級魚介として人気となっています。
普通のニジマスの生産量が減少する中、これらのような「プレミアムなニジマス」は今後ニジマス市場において主流となっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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