厚生労働省の調査によれば、世帯年収が1000万円を超える世帯は全体の10%ほどになっているようです。年収1000万円というと富裕層の入口として、当面の目標にしている人も多いと思います。しかし、年収1000万円は果たして豊かな生活を実現してくれるのでしょうか。
まず考えなければいけないのは、手取りの収入がいくらになるかです。年収1000万円といっても、額面金額であればそこから所得税や住民税が差し引かれ、実際の使えるお金は減少してしまいます。
また、家族構成によっても豊かさは変わってきます。同じ年収でも独身者と子供がいる家族では、1人当たりの可処分所得は変わってきます。厚生労働省の調査でも、子供のいる世帯の生活感が厳しいという傾向が出ています。
精神的な豊かさは考慮せず、ここでは物質的な豊かさだけを考えてみます。例えば、東京での理想のライフスタイルを考えた時、どのくらいの世帯年収が必要なのでしょうか。
東京で生活する場合、賃貸物件に住んでいればまず家賃がかかります。都心の物件はワンルームでも10万円近い家賃になっています。ファミリーで東京23区のそれなりの場所に住むためには最低でも20万円くらいの家賃が必要になります。人気エリアになれば30万円近い家賃も珍しくありません。
また、趣味やエンターテインメントにかかる費用の中で大きいのが、車の所有や外食、そして海外旅行などになると思います。どれもピンキリですが、もし理想を言うなら、車は500万円くらい、外食も一回一人当たり1万円くらいはかかります。
そして海外旅行もビジネスクラスで出かけ、現地でそれなりのホテルに宿泊すれば、1人50万円くらいはかかるのではないでしょうか(ニューヨークやロンドン、パリならもっと高いかもしれません)。
「年金2000万円問題」と同様、平均値で語ると誤解を生じやすいことには注意が必要ですが、理想のライフスタイルを想定してみると、実感として東京に住んで年収1000万円で豊かな生活を実現するのは、単身者であってもかなり難しいというのが現実です。
過去の経験からの肌感覚では、給与所得者であれば、世帯年収3000万円あれば、東京で家族と一緒に豊かな生活を実現できると思います。しかし、こんな率直な意見を書くと、また炎上してしまうのでしょうか?
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文・内藤 忍/提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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