8月31日、文部科学省は2023年度の国の予算案の概算要求を発表しました。宇宙関連予算は、2021年度の予算額1558億円の1.3倍となる2034億円が提示されました。今回の宇宙ビジネスニュースでは、要求額が特に増加が目立った項目を解説します。

温室効果ガス・水循環観測技術衛星
GOSAT-2(いぶき2号)の後継機である温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)の要求額は、前年度予算額の14倍にあたる229.1億円が提示されました。
GOSAT-GWは2023年度に打ち上げられる予定で、フライトモデルの開発費や打ち上げ費用に充てられるのではないかと推測されます。
イプシロンSロケットの開発
イプシロンロケットは、M-VロケットとH-IIAロケットで培った技術を最大限活用して打ち上げる「第一段階」と、H3ロケットとイプシロンロケットの技術・部品・機器等を共通化し、開発の効率化、打ち上げ価格低減を実現するなどH3ロケットとのシナジー効果を発揮して国際競争力を強化する「第二段階」で開発されています。「イプシロンSロケット」とは第二段階のイプシロンロケットを指します。

10月7日に打ち上げが予定されているイプシロンロケット6号機は第1段階の開発成果を適用した最終号機です。イプシロンSロケットは開発が進められています。
関連して、衛星コンステレーション関連技術開発の要求額は35.7億円(前年度比37%増)となりました。国内においても政府が小型衛星による地球観測網の構築に力を入れようとしていることが読み取れます。
アルテミス計画に向けた研究開発等
191.3億円(前年度比120%増)が提示された新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)は、宇宙ステーション補給機(HTV)を改良して開発する後継機です。将来的には月周回有人拠点「ゲートウェイ」への物資輸送等もできるように、発展性を持たせた設計になっています。1号機は2022年度、2号機は2023年度、3号機は2024年度にH3ロケットで打ち上げられ、ISSに物資を輸送する計画です。
ゲートウェイには、54.9億円(前年度比274%増)が提示されています。

2028年の完成を目指し、日本はミニ居住棟への機器の提供や国際居住棟の環境制御・生命維持装置の開発などを担当することが計画されています。
また、2024年度にイプシロンSロケットによる打ち上げが計画されている深宇宙探査技術実証機 DESTINY⁺の要求額も増大しています。
2021年12月に改訂された宇宙基本計画工程表では、「(アルテミス計画において)⽶国⼈以外で初となることを⽬指し、2020年代後半を⽬途に⽇本⼈による⽉⾯着陸の実現を図る」と、日本人宇宙飛行士の月面着陸の時期について言及されていました。
アルテミス計画に向けた研究開発は引き続き、重点項目となるのではないかと見られます。
提供元・宙畑
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