フェデラルファンド金利(FF金利)先物相場に基づくと、米連邦準備制度理事会(FRB)は2023年の上期まで利上げを続ける見込みである。その時点でのFF金利水準は4%近辺(9月2日時点)となっており、単純にいえば、米国債の利回りは今後、その水準まで上昇する可能性が高い。
もちろん、長期金利の水準は一般的に金融政策のみならず、ファンダメンタルズなどにも左右される。そのため、FF金利だけで米国債利回りの水準を論ずるのは無理があるように思われるだろう。しかし、1970年以降の利上げ局面を振り返ると、FF金利水準が米国債利回りに大きく影響している事実が確認できる。
図表は70年以降のFF金利と公定歩合の推移である。過去には、FF金利を頻繁に上下させていた時期があるため、今回はやや長めの期間の利上げ局面だけに注目した。具体的には、今回の利上げが少なくとも年内までは続くと仮定し、最初の利上げから最後の利上げまでが300日以上に及んだ6回の利上げ局面を振り返った。
米10年債利回りをFF金利と比較すると、いずれの利上げ局面でも米10年債利回りはFF金利に連動して上昇し、米10年債利回りがFF金利水準を継続的に下回ることはほとんどなかった。つまり、FF金利が最終的に4%近辺まで引き上げられると想定するのであれば、その水準を下回る米国債の買い持ちという戦略を利上げ局面で立てても、ほとんど勝ち目がないといえる。このことは、FRBがFF金利を中立水準かそれ以上まで引き上げ、その水準を一定期間にわたって維持する姿勢を示したこと、米国債のイールドカーブが長短で逆転し、ロールダウン効果が期待できないことも踏まえれば、一段と明確だ。
筆者は、FRBがFF金利を先物市場の織り込む4%近辺ではなく、それを大幅に上回る水準まで引き上げるリスクも無視できないと考えている。そうだとすれば、米国債への投資は当面、短期売買に徹するぐらいしか選択肢がない。米国債の売り持ちという戦略はやや長い目で勝機がないわけではないが、その間の金利収益が獲得できない上、今後のインフレ動向や金融政策を巡って見方が交錯してボラティリティーが高止まりする可能性を踏まえると、実際に収益を上げるのは困難だろう。「FRBには逆らうな」というのは、米国債投資にも当てはまりそうだ。
文・MCPアセット・マネジメント チーフストラテジスト / 嶋津 洋樹
提供元・きんざいOnline
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