AOKIホールディングスは東京オリ・パラの贈収賄事件で3人の逮捕者を出した。青木拡憲・元代表取締役会長、青木寶久・元代表取締役副会長、上田雄久・専務取締役執行役員の3人だ。元会長と元副会長は、長野の田んぼを自転車の2人乗りで紳士服を行商していた創業兄弟で、まさに「AOKIの魂」と呼ぶべき存在である。さぞや株価も下がっているのではと思いきや、これが650〜720円で変化もなく東京オリ・パラ贈収賄事件の影響を受けていないのだ。

なんといっても、5月12日に発表になった2022年3月決算の黒字転換が決定的だ。主要数字は以下の通り: ・売上高:1549億1600万円(前年比+8.2%) ・営業利益:54億4300万円(前年−57億9300万円) ・経常利益:43億6000万円(前年−66億600万円) ・親会社株主に帰属する当期純利益:25億6300万円(前年−119億3100万円)

8月5日にはこれに続く第1四半期決算(4月1日〜6月30日)も発表されたが、これも前年の赤字決算から黒字転換している。 ・売上高:392億2700万円(前年比+19.2%) ・営業利益:15億4700万円(前年−14億5700万円) ・経常利益:13億9000万円(前年−15億8300万円) ・親会社株主に帰属する当期純利益:12億5500万円(前年−17億3800万円)

ところで、今回の贈収賄事件では「紳士服大手のAOKIホールディングス」と紹介されることが多かったAOKIだが、2022年3月期決算で同社のセグメント別業績を振り返ってみると(単位:億円:カッコ内は営業利益) ・ファッション:886億円(47億円) ・アニヴェルセル・ブライダル:79億円(−5億円) ・エンターテイメント:569億円(5億円) ・不動産賃貸:44億円(8億円)

コロナ禍で赤字のアニヴェルセル・ブライダル事業やエンターテイメント事業は売上高に比べて、利益が伸び悩んでいるが、売り上げでは、すでにファッション業界以外の売り上げは692億円で全体の44.6%と本業のファッション事業に拮抗していることが分かる。この10年ほどで進めて来た多角化戦略は、売り上げだけみる限りは大きく花を咲かせている。

エンターテイメント事業のカラオケの「コート・ダジュール」、ネットカフェ&複合カフェの「快活CLUB」、24時間営業のフィットネスジム「FiT24」の店舗数は、717店舗(第1四半期末)で、本業のファッション事業の604店舗(第1四半期末)を大きく上回っているのだ。

このエンターテイメント事業は、コロナ禍が落ち着けば、大きく売り上げ・利益を伸ばすのが見えているだけに楽しみな事業である。これが東京オリ・パラで3人の逮捕者を出しても、株価が全く下げないAOKIホールディングスの原因と言えるだろう。もう「紳士服大手のAOKIとは言ってくれるな」は本音だろう。

文・三浦彰/提供元・SEVENTIE TWO

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