日本のみならず、世界で食材として愛されるタコ。乱獲による資源減の対策として養殖技術の開発が進められてきましたが、反対を唱える人も少なくないようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
モロッコでタコ漁が中止に
西アフリカに位置する世界有数のタコ生産国モロッコ。しかしそんなモロッコでのマダコの夏漁について、同国はこのほど漁の中止を決めたと公表しました。
これは資源調査の結果が悪かったことなどが影響しているとみられ、少なくとも12月15日まで禁漁となる見通しだそうです。世界的な原油高により漁の採算が合わない懸念もあったと考えられています。

たこ焼きにも影響?
モロッコから日本への冷凍タコの輸入量は、昨年9月から今年1月にかけて約2300t、一昨年の同時期には約5500tを記録しており、今回の禁漁は日本のタコ市場に影響を及ぼすと見られます。特に関西の市場はモロッコ産の扱いが多いため、たこ焼きの価格にも影響が出る可能性があるとのことです。
スペインでタコ養殖事業が開始
タコの資源量減少は西アフリカだけでなく、世界的なトレンドとなってしまっています。そんな中、タコの大消費国の一つであるスペインの企業が2019年に成功させた「タコの養殖」に、いま注目が集まっています。
タコの養殖を成功させたのは、スペイン・ガリシアに本部を置く水産企業、ヌエバ・ペスカノバ・グループ。同社は2019年7月、マダコの完全養殖に成功したと発表しました。

前年に養殖環境下でふ化したタコが成長し、うち雌1尾が産卵、繁殖過程に入ったことで、完全養殖と認められた形です。同社は今後もタコ養殖の研究を進め、2023年には養殖タコの販売を始めたい考えだと発表しています。
タコ養殖事業が非難されるワケ
しかしそんな画期的なタコ養殖事業に対し、大きな壁がそそり立っています。国際的な自然保護団体や研究者の間から「タコの養殖は非人道的である」という強い非難の声が上がっているのです。
非難が巻き起こっている理由は、タコの知能がとても高いこと。彼らはその8本の足を使って餌の入っている瓶の蓋を開けたり、自然界でも貝殻を道具として用いるなどの行動が観察されており、無脊椎動物の中では屈指の知能の高さを誇るとされています。

そのため、密集させて育てることの多い商業養殖は「倫理的に問題がある」のではないか、という懸念が挙げられているのです。
スペイン同様にタコの大消費国である我が国でも、タコの養殖に関する研究が進められています。そのため今後、この問題は我々にとっても無視できないものとなっていくかもしれません。



<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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