ボディビルの年齢別のナンバーワンを決める「日本マスターズ選手権大会」が8月21日、北海道・函館市で開催された。40歳以上の選手たちが各階級に分かれて日本一を争うこの大会。世界選手権大会では55歳以上級が最年長クラスとなるが、わが国には「長寿大国ニッポン」を象徴するかのごとく70歳以上級、75歳以上級、そして80歳以上級といった階級も存在する。
その80歳以上級で圧倒的な強さを発揮していたのが、同階級5連覇を達成している金澤利翼選手。今大会翌日に86歳の誕生日を迎えた現役最高齢ボディビルダーだ。そんな絶対王者が存在するクラスで、今年は大波乱が発生した。
「去年は予選で1位だったんです。決勝で逆転されたんですが、目上の金澤さんに少なくとも予選で勝てたという。これは頑張ればなんとかなるんじゃないかと、モチベーションが上がったんです。そしてこの1年、頑張ってきた結果が今日出ました! ありがとうございます!」
そういって目を潤ませたのは80歳以上級の新王者となった笠原孝昭選手、御年81歳。同階級が設立されて以来、初となる世代交代が起きた。
「62歳でボディビルを始めて、キャリアは18年目です。日本タイトルを獲ったのは初めてです」
もともと笠原選手はスポーツとは無縁のサラリーマン。トレーニングに触れるようになったのは、病院に通わざるをえなくなるほど悪化した腰痛を改善するために始めたのがそもそものきっかけだった。
「運動をしていると、確かに腰の調子はよくなるんです。ですがサラリーマンだったので、仕事が忙しくなると運動を続けるわけにもいかず、それで腰は良くなったり悪くなったりの繰り返しでした。当時は60歳が定年の年齢だったのですが、結局自分の時間が取れるのは定年後ということになります。それで60歳を超えてから自分でトレーニングを始めたら、どんどん良くなっていきました。そして、もともとは腰痛の改善が目的だったのが、だんだんと目標が高くなっていったんです(笑)」
そこで「ボディビル」というものを知った笠原選手は、2004年の群馬県選手権マスターズでコンテストデビュー。3位という好成績を収めた。
「そこからもっと頑張りたいと思い、日本マスターズ選手権というものがあることを知って、その大会を目標にしました」
しかし、2008年に初めて日本マスターズにエントリーするも、他の選手たちとのレベルの差に愕然。その後、出直しを図り、2012年に再挑戦して70歳以上級で7位に。以後、毎年出場を続けてきた。
「すると、少しずつ順位が上がってきたんです。そして今年、ついに念願の優勝を果たすことができました!」
今後の目標は「何歳までできるか分かりませんが、連覇です」という笠原選手。その背中を追いかけて続けてきた絶対王者に勝ち、歓喜の涙を流した81歳の新チャンピオン。いくつになっても真剣勝負。生涯スポーツと言われるボディビルの素晴らしさがここにある。
文:藤本かずまさ 撮影:中島康介
笠原孝昭選手
撮影:中島康介
執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。
提供元・FITNESS LOVE
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