このブログがアップされてから半日か一日程度で英国の新しい首相が決定します。エリザベス・トラス氏とリシ・スナク氏の最終対決となっていますが、下馬評からはトラス氏が選出されるとほぼ断言してよいと思います。そうなれば英国では3人目の女性首相になります。トラス氏は筋金入りの対中露強硬派で両国に厳しい姿勢を貫くだろうとみられており、どういう展開を見せるのか着目しています。

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目立たないですが、実はイタリアも総選挙に入っており、9月25日に投票が迫っています。この国はとにかく連立がうまくいかず、バラバラ感が強くなっています。リーマンショック時の欧州中央銀行総裁として手腕を発揮したマリオ ドラギ氏が請われて首相になっていましたが、彼ですら纏めることができませんでした。この総選挙の行方で第一党を狙うのがジョルジャ メローニ女史率いる極右政党「イタリアの同胞(FDI)」で、現状ならば同党が主導し、同じく極右の「同盟」と右派の「フォルツァ イタリア」と合わせて過半数確保が視野に入っています。メローニ氏は45歳で学生時代からのパリパリの運動家でいわゆる「ほんまもの」であります。

最近、女性宰相が増えており、ニュージーランドやフィンランド、スウェーデンの首相はしばしばメディアなどでもお見掛けします。フランスでは大統領選の度にルペン氏の存在感が大きくなっています。女性宰相の場合、その人の意思が非常に強く、時として政党内のバランスを保つことに失敗しますが、選挙時におけるブレない主張とその強さが男性にみられない安心感を誘う点はあるかもしれません。

ドイツのメルケル氏にしろ、英国のメイ氏にしろ「自分自身に強い」性格です。メルケル氏在任中、欧州危機の際には「ドイツの財政健全主義が南欧に厳しい姿勢」とメディアに書かれていましたが、私からするとドイツ人の性格以上にメルケル氏の一途さがそうさせたのではないかと思います。

アメリカからは女性大統領候補がなかなか上がってきませんが、右傾化という意味ではトランプ氏への根強い人気は無視できません。トランプ氏については数日中にブログを書きますのでその件はそちらに回します。一方、ナンシー ペロシ下院議長が台湾訪問を強行したことは記憶に新しく、彼女の行動も自分の信念を貫いたともいえそうです。日本では高市早苗氏がやはりその傾向で取り巻きを中心に台風の目を形成しているように見えます。

なぜ、女性が台頭してきたのでしょうか?多分ですが、迎合しない強い信念を持っている点で頭角を現したというのが私の読みです。その背景は権威主義との戦い、ロシアのウクライナ侵攻、中国の拡大主義への抵抗といったこの数年間の潮流への強い危機感であります。筋金入りの主張はこういう揺れる社会情勢の際には極めて支持をされやすいとも言えます。極端な話、ウクライナ侵攻が引き起こした女性政治家の乱とも言えないでしょうか?

では俯瞰した場合にこの傾向は社会全体にポジティブでしょうか、ネガティブでしょうか?双方あると思います。女性の社会進出という点では多くの女性に勇気づけることになるでしょう。企業でも社長が女性のケースは増えています。特に海外では鉱山会社とか不動産開発といった従来男性主体の企業でも女性社長も見られます。個人的には生理学的に女性の才能は政治家により向いていると思います。

一方、女性は全体を見るより点に集中する傾向が強く、妙に頑なになる時があります。例えば謝罪に追い込まれるようなケースでも謝罪しないと言えます。もちろん、日本の謝罪文化と違い、男女ともに謝罪はよほどの限りしませんが、女性トップが深々と頭を下げたシーンは思い出せません。フィンランド首相のプライベートビデオ流出事件でも彼女はプライベートと公務は別と突っぱねていました。このような強気で振り回されたのがメイ氏が首相だった時の英国でした。のども過ぎればなんとやら、ですが、在任期間は短かったけれどあの時は傍で見ていても悲惨でした。

さて、最後に女性宰相が取り囲み、右傾化する欧州に対してロシアとウクライナの戦いにどう影響するのでしょうか?私が予想する欧州の態度は「好きにしたら」「ただ、火の粉はこちらに来ないようにしてね」であります。右傾化とは保守化、つまり自国中心主義であり、他国の巻き添えになりたくないという意味です。それが今後、強く出るというのが私の予想です。

最近、テレビニュースでゼレンスキー大統領の出番が少なくなったと思います。私は彼の「絶対に負けない。奪取する」という一本調子のメッセージがあまりに工夫がないと思うのです。やはり政治家のバックグランドがないせいか、表向きの声明と裏側の策、更に裏の裏の策ぐらいまで常に握っているような戦略家に見えないのです。

欧州ではウクライナ問題に関し、和平派と正義派のどちらが多いのかを社会のバロメーターの一つとしているようですが、現状、和平派が圧倒です。つまり、そろそろ落としどころを見つけろ、であります。ゼレンスキー氏が主張する正義派の支持層は10%台まで下がっているところもあります。それは右傾化する欧州の意味するところが「人のことをかまっている場合じゃない。まずは自国民の平和と安全と繁栄だ」という視線なのでしょう。更に物価高の一因はウクライナ問題にあるという追い打ちすらあるとみています。

世の中がロシアに対して厳しい姿勢を取り続けることは変わりないでしょう。ただウクライナに協力するという姿勢も薄れてくるとみています。万が一、原発事故でもあった際には紛争の強制終了に動くでしょうが、そんな惨事は考えたくもないので誰かが仲裁すべきなのですが、誰が適任でしょうか?欧州の女性宰相たちは誰もやらない気がします自国を守ることが主眼だからです。この例えが適切がどうかわかりませんが、母としての母性本能に似たところもあるのかもしれません。

その点で見ると私ははじめエルドアン大統領かと思ったのですが、最近習近平氏というのもありかもしれないと思っています。というよりその役を共産党大会後に積極的に買って出る気がします。そうなった場合、和平工作は成功すると思いますが、ウクライナはすっかり中国化するかもしれません。西側諸国は怒るかもしれませんが、日欧米が影響力を発揮できないともいえるのでしょう。

こう見ると地球儀ベースで世の中はどこに向かっているのか、予想し難い時代を迎えたとも言えます。世の中の判断基準も確実に変わっていくようなきがします。過去の経験則は通用しないのでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月5日の記事より転載させていただきました。