米テキサス大学オースティン校(UT Austin)の最新研究により、SNS上でニュース記事を共有・拡散すると、その記事のトピックについて「自分は詳しく知っている」と思い込みやすくなることが判明しました。

ニュース記事を共有した人は、中身を読んでいない、あるいは見出しをチラッと見ただけであっても、その内容についてわかった気になってしまうようです。

研究者によれば、この効果は「自身のSNSの投稿欄に記事を共有することで、ある種の”専門家(expert)”としての自己意識が形成され、共有した記事と同等の知識があると感じてしまうから」と説明しています。

この結果には、思い当たる節がある人は多いかもしれませんね…

研究の詳細は、2022年7月29日付で学術誌『Journal of Consumer Psychology』に掲載されています。

投稿欄でのニュース共有で「専門家」のような気分に

研究主任のスーザン・ブロニアルチェク(Susan Broniarczyk)氏とエイドリアン・ウォード(Adrian Ward)氏は以前から、SNS上で共有したニュース記事を深く読んでいない人が多いことを知っていました。

たとえば、ロイターによる近年の調査(Digital News Report 2017)では、オンラインニュースを共有した人の中で、実際に記事全文を読んだ人は51%、一部を読んだ人は26%、見出しや数行だけ目を通した人は22%という結果が示されています。

つまり、約半数が記事を正確には読んでいないのです。

そこでチームは、同大の学生を対象にいくつかの実験を行いました。

まず、98人の学生にオンラインのニュース記事を提示し、それを読むか、SNSで共有するか、あるいはその両方を行うか、自由にするよう指示しました。

使用したニュース記事は、“Why Does Theatre Popcorn Cost So Much(なぜ映画館のポップコーンは高いのか)”“Red Meats Linked to Cancer(赤身肉はがんと関連していた)” などです。

次に、それぞれの記事について、各学生の「主観的知識」「客観的知識」、つまり、自身が知っていると思っていることと、実際に知っていることを測定しました。

記事を読んでいないのに「知っている」と過信する?
Credit: canva

その結果、記事全文に目を通した学生は、SNSでの共有の有無に関係なく、両方の知識で高い水準を記録しました。

ところが、ニュース記事をSNS上で共有した学生のうち、内容をほとんど読んでいない、あるいは見出しだけを読んだ学生では、客観的知識が低く、主観的知識だけが増加していたのです。

また、がん予防の記事を共有した学生のうち、内容を読んでいない人は、実際に記事を読んでいる学生に比べ、「がん予防についてよく知っている」と考えていました。

この心理効果について、ブロニアルチェク氏は、SNS上での記事共有によって”専門家”としての自己意識が芽生え、「自分は記事(タイトル)と同等の知識を持っている」と思い込んでしまうことから生じる、と説明しています。

確かに、ツイッター等でニュースをリツイートするだけで、何かその内容に関する知識がついたように錯覚することはないでしょうか。

もし、そう感じることがあれば、この心理効果が起きていると考えられます。