イヌも年齢を重ねると、人間と同じように認知症になります。

これは「犬の認知機能障害(CCD:Canine cognitive dysfunction)」として知られており、感情が不安定になったり、トイレが上手にできなくなったりします。

そして最近、アメリカ・ワシントン大学(University of Washington)疫学部に所属するサラ・ヤーボロー氏ら研究チームは、運動によってイヌの認知症を予防できると発表しました。

高齢のイヌは年々認知症を発症しやすくなりますが、活動レベルを高めることが予防に役立つのです

研究の詳細は、2022年8月25日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

犬も認知症になる

イヌも認知症になる
Credit:Canva

「犬の認知機能障害(CCD)」は、人間のアルツハイマー型認知症に似ており、行動や認知に影響を与える進行性の脳疾患です。

一般的には8歳以上のイヌに見られますが、6歳という若さで発症することもあるようです。

イヌが認知症になると、感情のバランスが崩れます。

飼い主に対して急に興味を失ったり、過剰に愛情を求めるようになったりします。

また行動にも大きな影響があります。

慣れ親しんだ自宅や庭で迷子になったり、後ろ向きに歩く方法を忘れ、部屋の隅で動けなくなったりするのです。

さらに睡眠が浅くなる、目的もなく徘徊する、吠え続けるなどの症状もあるようです。

飼い主がイヌの認知症を意識しているなら予防につながる
Credit:Canva

しかしながら、これらを「イヌの認知症」として意識している飼い主はそこまで多くありません。

なぜなら飼い主たちが、こうした症状を「加齢によって生じる当たり前の反応」と捉えているからです。

だからこそ、改めて認知症として意識することには大きなメリットがあります。

人間の認知症と同様、日々の生活の中でイヌの認知症を予防し、健康で幸せな生活を長続きさせてあげられるからです。

ヤーボロー氏らの研究結果は、イヌの認知症を予防するうえで役立つでしょう。

十分な散歩と運動で「犬の認知症」を予防しよう

ヤーボロー氏ら研究チームは、イヌの老化プロジェクトの一環で、1万5000頭以上のイヌのデータを集めました。

その中には、飼い主たちが提出した2つのアンケートが含まれています。

1つは、イヌの健康状態や運動量に尋ねたもの。

もう1つは、イヌの認知機能を評価するものでした。

そしてこれらのデータを分析した結果、1.4%のイヌが「犬の認知機能障害(CCD)」を患っていると判明。

しかも10歳以上のイヌでは、年齢が上がるごとに認知症のオッズ(ある現象が起きる確率と起きない確率の比)が52%増加していました。

イヌの年齢と認知機能障害(CCD)の関連を表すロジスティック回帰曲線
Credit:Sarah Yarborough(University of Washington)et al., Scientific Reports(2022)

上図でも年齢を重ねるごとに認知症の発症確率が上昇しているのが明らかです。

では、イヌの認知症を予防する方法はあるのでしょうか?

今回のデータ分析により、活発でないイヌにおける認知症のオッズは、非常に活発なイヌに比べて6.47倍高いと判明。

つまり散歩などで普段から活発にしているなら、イヌは認知症になりづらいと考えられます。

もちろん、「認知症の初期症状があらわれた結果、運動不足になっている」可能性もあるため、断言には至りません。

運動や散歩を十分に行っているなら、認知症を予防できる可能性は高い
Credit:Canva

それでも、運動が人間の認知症を予防するのは事実であり、同様のことがイヌにも当てはまる可能性は高いと言えるでしょう。

イヌをこよなく愛する飼い主にとって、認知症になったとしてもその世話は苦にならないかもしれません。

それでも感情的・身体的な健康を長く保ってほしいなら、高齢犬が運動できるよう十分にサポートしてあげてください。

参考文献
Dogs can get dementia – but lots of walks may lower the risk

元論文
Evaluation of cognitive function in the Dog Aging Project: associations with baseline canine characteristics