「タンパク質はただ摂ればいいわけじゃなくて、いつ摂るかがとても重要だ」。私たちの多くがそう聞かされてきたし、できるだけ理想のタイミングを逃さずにこれを摂取してきた。しかし、この定説についての疑問が多く持ち上がるようになり、新たな研究では、これまで言われてきたような「アナボリック・ウィンドウ」など存在しないのではないかとさえ主張されるようになってきたのだ。今回は最新情報をもとに、タンパク質は筋発達にどう影響し、摂取するタイミングの影響を受けるのかどうかについて解説していきたい。
文:Sarah Chadwell, NASM-CPT 翻訳:ゴンズプロダクション
今回はタンパク質を最大限に利用するための摂取方法について述べていくわけだが、そもそもタンパク質について十分に理解できているだろうか。「タンパク質って何?」とか「なぜ摂る必要があるの?」という質問にどれだけの人が答えられるだろうか。
タンパク質とは?
タンパク質は複雑な構造を持つ分子化合物であり、私たちの体の中で様々な働きをもたらす。『ザ・USナショナル・ライブラリー・オブ・メディスン』によると、タンパク質は小さなアミノ酸と呼ばれる小さな物質が何百、何千も連鎖結合して構成されたものであると記載されている。また、タンパク質を構成するアミノ酸の種類は全部で20種類あり、結合の配列によってタンパク質の3次元構造が作られ、特定の機能を発揮するのだそうだ。
トレーニングをするかしないか、あるいは性別や年齢にもかかわらず、食事でタンパク質を摂る必要がある。体内に取り込まれたタンパク質は内臓やその他の組織、あらゆる細胞を正常に機能させ、構造を維持するために働くからだ。また、タンパク質はエネルギー源になることもある。いずれにしても特に筋発達を求めるアスリートにはとても重要な栄養素なのだ。
多くの役割を担うタンパク質だからこそ、私たちが食事をするときは、できるだけ高品質で濃度の高いタンパク質を食べるようにしたい。そうすることで、健康やあらゆる機能を正常に保つのはもちろんのこと、運動能力を高め、疲労回復や筋発達を促すことができる。では具体的に何をどのように摂取するのがいいのだろうか。
摂取タイミング
ウエイトトレーニングに励んでいる人たちには、筋肉を発達させたいという共通の目標がある。そのため、一般の人たち以上にタンパク質の摂取には気をつかう必要があるのだ。
つまり、より良質のタンパク質を、より多く摂取したいわけだ。そうすることでトレーニングの成果が得やすくなり、筋量が増え、筋力や運動能力の向上が得られるのだ。また、トレーニングを行うと筋中に同化されているタンパク質が分解される。分解を阻止することはできないが、それ以上に摂取すれば、分解された分を補い体に取り込むことができるようになる。つまり、それが筋発達なのだ。
ナオミ・セルマック博士が発表した実験結果によると、ウエイトトレーニングのあとにプロテインを摂取すると、ワークアウト後の疲労回復が促進され、筋中に取り込まれるタンパク質の量が増加することが示されている。
このことは別に新しいニュースでもなく、すでに多くのトレーニーが知っていることだ。では、ワークアウト後のどのタイミングでタンパク質を摂取するのがいいのか。そもそもタンパク質を摂取するタイミングによって、得られる結果に差があるのだろうか。それを調べるために多くの実験が行われ、いわゆる「プロテイン・タイミング」とか「アナボリック・ウィンドー」などという言葉をよく耳にするようになったのだ。
プロテイン・タイミングやアナボリック・ウィンドー
プロテイン・タイミングとは、どのタイミングでタンパク質を摂取すれば最も体に効率よく利用されるかを示すものだ。
体が特定の栄養素を効率よく利用するのは、その栄養素がしっかり消費されたあと、すぐに補給された場合ではないだろうか。例えばタンパク質なら、運動中にタンパク質は炭水化物と共に消費されるので、ワークアウト後に補給されるのが最も理想的であるという主張が多くのトレーニーたちの賛同を得た。
しかも運動によって筋肉は傷つくので、それを修復するためにもタンパク質は有用だ。そういったことからも、疲労回復と傷の修復、そして消費分を補給する目的で、ワークアウト直後にタンパク質を摂取するのが正しいと認識されていったのだ。タンパク質を最大限有効に活用するにはタイミングが重要であるという考え方から、アナボリック・ウィンドーという言葉が生まれた。この窓(ウィンドー)が全開している時間帯にタンパク質を体に供給すれば、窓から大量のタンパク質が流れ込み、筋肉に同化されるというイメージである。
この窓が全開している時間は、当初の研究ではワークアウトを終えてから30分以内であると言われていた。
だからトレーニーたちは、ワークアウトを終えるとはってでもロッカーに向かい、準備してきたプロテインシェイクを飲むようになったのだ。このタイミングでプロテインを体に補給することでトレーニング効果を最大限に活かし、筋肥大と筋力向上が得られると確認されてきたのである。しかし、研究が進むうちに、アナボリック・ウィンドーが開いているのはワークアウト直後の30分ではなく2時間であるという主張に変わってきた。
これが広まったことで、それまで見られたような、ワークアウト直後に何がなんでもプロテインシェイクを!というような風潮はやや薄らいだようだ。それでも、ワークアウト後にプロテインを摂取することが有用であるという考え方に変わりはないのである。
ワークアウト前のタンパク質摂取は効果的?
ところで、ワークアウト前のタンパク質摂取は重要ではないのだろうか。トレーニーの中にはワークアウトの30〜60分前にプロテインシェイクを飲んでいるという人もいるはずだ。そういう人たちは、事前にプロテインを体に補給することで、ワークアウト中のエネルギーレベルを高く維持できるという主張を聞いたからであろう。
しかし、ワークアウト前にアミノ酸を体に供給しても、摂取しなかった被験者と結果に大差は見られないという実験結果もあるのだ。これについては、研究者たちは「アミノ酸の飽和状態」が原因ではないかと推測している。
つまり、すでに血中アミノ酸濃度が適度に高められている人の場合、それ以上のタンパク質を補給して血中のアミノ酸濃度を高めても、筋肉が同化できるタンパク質の量には上限があるというわけだ。上限を超える量を補給しても筋肉には使われない。被験者がワークアウト前までに数回の高タンパク質食をすでに食べているのだとすれば、ワークアウト前にプロテインシェイクを飲んでも、上限を超えたタンパク質は体に取り込まれないのではないかというのが研究者たちの推測したアミノ酸の飽和状態なのである。
ワークアウト後のタンパク質は必須
ワークアウト前のタンパク質については、アミノ酸濃度が飽和状態になっていなければ摂る意味があるが、すでにワークアウト前までに高タンパク質の食事を数回しているという人では無駄になる可能性もある。では、ワークアウト後のタンパク質摂取についてはどうか。ワークアウト後の筋線維は傷ついて疲労しているし、体内のタンパク質も消費されている。
そのため、ワークアウト後のタンパク質摂取については、どんなトレーニーにも有効であると考えられる。実際、ワークアウト後のタンパク質摂取について否定的な結果が得られた実験はほとんどない。効果ありという結果が安定的に得られているので、ワークアウト後のタンパク質に関して言えば、やはり摂取したほうがいいだろう。
また、ワークアウト後は、運動によって筋肉のタンパク同化が行われやすい体内環境が作られているので、このタイミングは逃したくない。ワークアウト後に20gのホエイプロテインを摂取することは、疲労回復や筋線維の傷の修復を促すだけでなく、タンパク質の筋中同化を促す目的においても勧めたいことだ。
提供元・FITNESS LOVE
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