再生可能エネルギーに注目が集まっている昨今、新たな発電方法が続々と考案されています。

最近では、ノルウェーのスタートアップ「ワールド・ワイド・ウインド」が、公式サイトで海に浮かぶ新型風力発電機を公表。

従来の「風車型」とは大きく異なり、何本かの枝が伸びた樹木のような見た目をしています。

同社は「現在の風力発電機の2倍の出力を達成できる」と主張しており、2026年までには小型モデルを完成させる予定です。

垂直軸型風力タービンとは?

一般的な「水平軸型風力タービン」
Credit:Canva

私たちがよく見かける風力発電機は、水平軸型の風力タービン(HAWT:horizontal-axis wind turbine)です。

構造がシンプルで大型化しやすいのが特徴であり、山上や海上に設置されます。

しかしHAWTにもデメリットがあります。

発電機や巨大なブレードなど、重い部品を高い位置に取り付けなければいけないので、ポールを地面に強く固定する必要があるのです。

海上であればその広さを有効活用できますが、海の上に浮かべるだけでは、上部の重みで倒れてしまうでしょう。

そのため、海上に設置するには、ポールを海底まで伸ばしたり、埋め立て地を作ったりと、頑丈な土台を用意しなければいけません。

現存する「垂直軸型風力タービン」
Credit:Canva

そこでワールド・ワイド・ウインド社は、地面に対して垂直軸をもつ「垂直型風力タービン(VAWT:vertical-axis wind turbine)」を利用することにしました。

垂直軸構造により、どの方向からの風でも利用できます。

また重い部品はポール下部にまとめられるため、海上に浮かべても安定しやすいでしょう。

しかし、VAWTにもデメリットがあります。

HAWTに比べて発電効率がはるかに悪いのです。

そこでワールド・ワイド・ウインド社は、効率を高める「2重構造のVAWT」を考案しました。

タービンの逆回転を利用した「海に浮かぶ風力発電機」

新しく考案された「浮体式VAWT」
Credit:World Wide Wind

新しく考案された浮体式VAWTは、枝が伸びた樹木のような見た目をしています。

しかし、この枝が風を受けるためのブレードであり、上部と下部の2重構造になっています。

片方のタービンがロータ(回転する部分)に繋がっており、もう片方のタービンはステータ(固定・静止部分)に繋がっています。

そして互いに逆回転するよう設計されています。

上部と下部のタービンが互いに逆回転する
Credit:World Wide Wind

これにより、ステータに対するロータの相対回転速度が2倍になり、発電効率が高まるというのです。

またワールド・ワイド・ウインド社によると、木の枝のように斜め上に伸びたブレードデザインは、タービンによる後流効果(風力タービンの影響を受けて風が弱まったり変化したりすること)を低減するようです。

そのおかげで、1つ1つの発電機を近づけて密集させられます。

まるで林や森のような間隔でVAWTを設置し、効率アップを狙えます。

海原に生える樹木のように密集させられる
Credit:World Wide Wind

さらに新しいVAWTは傾いても問題なく作動するため、ある程度の突風や荒波にも耐えられるようです。

ちなみに現在、世界最大の風力タービンは、MingYang Smart Energy社が開発しており、高さ242mで16MWの発電容量をもつと言われています。

一方ワールド・ワイド・ウインド社は「2026年までに容量3MWの小型モデルを稼働させ、2029年までには400mの40MWモデルを開発できる」と主張。

しかし現段階では、小型モデルでさえ実現可能だという証拠が提出されていません。

「全長400mのビッグモデルが海に浮かぶなんて到底信じられない」という人がほとんどでしょう。

確かに斬新で興味深いアイデアですが、「期待できるかどうか」という判断ですら、あと数年は待った方がよさそうです。

参考文献
Contra-rotating floating turbines promise unprecedented scale and power