猛毒を持ち、調理時のミスが死に直結する危険な魚であるフグは、調理提供にあたり特殊な資格を必要とします。しかしその資格を取得できる基準はなぜか全国でバラバラという状態が続いてきました。
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ふぐ調理師資格取得基準の統一化
厚生労働省は先月5日、先だって推進してきた「ふぐ調理師(処理者)資格の認定要件の見直し」の現状について、5月に実施した調査の結果を公表しました。
それによると、全国47都道府県のうち、「見直し済み」の自治体は36、「見直し中(または検討中)」とした自治体は11だったそうです。
ふぐ調理師資格は、その取得できる基準の詳細や難易度が都道府県ごとにバラバラという状態が続いており、業界団体は国に対し基準の全国統一を求めていました。そしてそれに伴い、2019年6月末にふぐ調理師資格の取得基準の統一を行うが決定し、今日の状況へと続いています。
ふぐ調理師の資格とは?
フグといえば、我が国で古くから愛される高級食材。しかし一方でテトロドトキシンという強い毒を持ち、不用意に食べると死んでしまうこともある恐ろしい魚です。
そのため、各都道府県が条例などによって、その調理・提供を行うための資格を定めています。これが「ふぐ調理師資格(自治体によって名称は変わる)」です。
ふぐ調理師の資格は、各都道府県が実施する試験に合格することで得られます。なお、この資格はあくまで「提供」のために必要となるもので、私的に調理して食べる際には必要ではありません。ただ、ふぐの有毒部位は種類や地域によっての変動が大きいため、素人が調理のための知識をマスターするのは難しく、一般的には素人調理はするべきではありません。
なぜ統一されるのか
このふぐ調理師の資格取得基準について、上記の通り都道府県ごとで違いがあるため問題視されてきました。
例えば東京都ではこれまで、資格を取得できるのは「調理師免許を持ち、2年以上の従事経験がある者」に限定され、さらに厳格な学科試験と技能試験が実施されてきました。これは、東京には豊洲市場という全国の魚介類が集まる市場があり、各地から多種多様のふぐが入荷するため、より詳しく体系的な「ふぐとその毒に関する知識」を持ち、捌く技術が求められてきたためです。
一方で、学科試験のみで技能試験は行われていないような自治体もかつてはあり、どうしても取得難易度に大きな差が生じていました。そのため、東京都のような特に厳しい基準を定めてきた自治体においては、他の自治体で資格を取得した人に対しても、自治体内でふぐ調理に携わろうとする場合は改めてその技能を確認する必要性があり、これがふぐ調理者同士の円滑な交流を妨げてきました。
このような事情から、国が統一した資格取得基準を定めるよう、各自治体から要請がされてきたのです。
フグの雑種増加も
また近年では、海洋温暖化などによりふぐの分布域が変化しています。それにより、これまで東日本で見られなかったトラフグが普通に水揚げされるようになっていたり、複数の種の生息域が重なることによって雑種が発生するといったことが起きています。
そのため、これまでのような地域的なふぐの知識だけでなく、全国的なふぐの種類やそれを食用にするための知識が求められるようになっているのです。
さらに加えて、今後世界に日本のふぐ食文化をアピールしていくためにも、安全で統一された厳格な基準を定める必要性も求められていました。これらのような事情から、ふぐ調理師資格の取得基準統一が求められているのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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